「不完全な僕」
「お嬢様、お茶が入りました」
猫舌な私でも飲みやすく、それでいてぬるいわけでもなく適度に温かい紅茶。何年も私に仕えてきた彼はいつも完璧に仕事をこなす。
彼の完璧なところは仕事だけではない。身嗜みはもちろん、一つ一つの仕草や言葉遣い、そして周囲への気遣いに至るまで全て美しい。
さらにその容姿に至るまで欠けることのない、神が私に遣わせた最高の従者だ。
そんな彼にも、一つだけ似合わないものがある。
「貴方もいかがかしら?」
「ぼ、僕は大丈夫です」
あれほどの美しい顔と声には似つかわしく、彼は自らを僕と呼ぶ。
これでこそ愛おしい、私の不完全な僕(しもべ)だ。
8/31/2023, 12:26:04 PM