ナリスケ

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12/1/2023, 4:04:00 PM

距離


 メガネ・・・やっぱり、そこにあったか。

深夜1時過ぎ、唯一LINEの友だちに載ったままになっていた元同僚からの返信を眺めながらつぶやく。
 そして、2つのそれぞれ真逆に向いた気持ちが同時に沸き起こる。
 
 ないならないで、日常生活に困る程ではないが、置き忘れているのが前の職場、、、って、、、気持ちが落ちる。
 ・・・取りに行かなきゃダメだよな、やっぱり。
 正直、数ヶ月前に面接の時あれだけやる気と仕事への情熱を語ったにも関わらず、試用期間の3ヶ月間だけ在職して、使えないダメな見本のような辞め方をした事を、今だ引きずっている。、、、今更どの面下げて、、、カッコ悪すぎる、、、。

 ・・・これが、ネがディブな嘘偽りない気持ち。


 
 取りに行く、、、正当で何一つ不自然さや不純な動機を感じさせないで、会いにいける。、、、差し入れとか、持っていって、、、想像しただけで、気持ちが上がる。
 ・・・タイミング、絶対はずせん。会社に居る時間、、、お昼か?
そんなことを、考える時間が楽しくてしょうがない、、、。
 正直、あの人がいたから、試用期間の3ヶ月間、出勤することができたようなものだった。一目惚れという感情が人に及ぼす影響に、今更ながら感心する。、、さぁ、なんて言って誘う?、、、どんな理由があれば会ってくれる?

 ・・・これも、ポジティブな嘘偽りない気持ち。


 それぞれの気持ちが、日に日に、お互い真逆の方向へ大きく広がっていく。どっちも、自分の気持ちに変わりはない。 それぞれの気持ちが、真逆
に引っ張り合うから、一歩も動くことが出来ない。

 ・・・前の職場まで、車で10分。 

 この距離が、自分にとって遠いのか近いのかは、未だ動けないままの自分にはわからない。
 
 きっと、あの人との距離が遠ければ遠いほど、近ければ近いほど、気持ちは大きく揺れ動く。
 きっと、距離が気持ちの方向や大きさを支配している。
 だったら、自分が感じたい方向へ、自分が行きたい場所へ、自分で動けば、その距離を好きなように自分でつくっていくことが出来る、、、どんな距離でも。

すげぇ、・・・思うがままじゃん。


ナリスケ
 

 
 
 

10/21/2023, 10:18:01 PM

声が枯れるまで


 『ちゃんと言葉にしてよ、、、』
 
・・・はぁ、またはじまった。最近何か心配させるようなことしたかな?
考えても・・・何もない。
 人からみれば、当たり前すぎて怒られるかもしれないが、付き合うようになってから今日までの4年半、全く浮気などしていないし、この人以外に興味すら無い。正直、この人以外なんて考えられない。むしろ、好きとか愛してるとかの感情が、態度に出まくってるのを抑えてるくらいだ。
 
 ・・・ん~~、意図が見えん・・・
とりあえずは、しらじらくボケた返事を返す。
 
 
 『・・・なにを?』


 『好きとか嫌いとか、、、愛してるなら愛してるとか、、、!』


 照れて、困ったとこ見たくてからかってるなら、このトーンはない・・・。真面目にこんな事を言われると、逆にこっちが不安になる。逆に同じ質問をしたくなる。
 
 
 『そんなの・・・、言わなくても伝わってるでしょ、こっちは言葉じゃなくても、ちゃんと伝わってるよ。』

 『いーや、伝わらん!ちゃんと言ってくれないとわからん!』

 ・・・マジ?・・・で?伝わらん?・・・って?意識してすごしているわけではないけど、好きっていう気持ちはいろんな形になって、2人の日常にあふれている。・・・うそをつけばすぐにバレるし、思ってる事が態度や表情にすぐにでてしまう。当然、この思いや感情なんかは、きっと・・・、
・・・伝わってると、全く疑いなく思っている、、、んだけども・・・。えっ?・・・伝わってないです?

 『あのね、ココロから信用している人が、言葉にして伝えてくれることって、何よりも確信できて、小さな不安も大きな不安も、一瞬で吹き飛ばしてくれるの。 だからといって今何か不安があって、、、とかじゃないから安心してね。 もちろん一緒にいて、大切に思ってくれてるんだろうなーって、しょっちゅう思ってる。時々うっとうしいくらい(笑)。あっ、悪い意味に受け取らないでね。 でも、、可能性だけで言えば、これって自分が都合よく思ってるだけで、本当は違う可能性だってあるでしょ?
 

 ワタシは・・・そんなのいらない。
 
 
 好きとか愛してるとかの気持ちは、完璧な形で、絶対なものしかいらない。
 気持ちっていう形のないものを、完璧な形で、絶対なものに変換して伝える事ができるのは、お互いが100の信用と信頼で一緒にいる人にだけだと思う。
 
 ワタシは、あなたが言ってくれる言葉以上に信用できるものなんて、今のところ、この世に存在していない。
 
 ワタシは、いつでもどこでも、毎日でもこの先ずっとでも、ちゃんとあなたに聞こえるように、ちゃんとあなたに思いが届くように、小さな声でも大きな声でも、この声が枯れるまででも枯れてしまってでも、、、あなたにちゃんと言える・・・愛してるって。』


 ・・・そうだよな。
 
 この先、一緒に年月を重ねて、阿吽の呼吸ってのにも憧れるけど、年月を重ねて今よりもっと、愛してるって、ちゃんと言葉で言うほうが、大切なことのように思えてきた。

 今はまだ、言うたびにどうしても、耳が赤くなる生理現象を、可及的速やかに克服することに一生懸命だ。
 


ナリスケ

10/19/2023, 4:11:02 PM

すれ違い

 ・・・『でさ、ところでまだ定職、決まってないよね?』
 
 「もう少し、ゆっくりしようかと思ってます。」
 
 ・・・『私の知り合いが、ちょうど人を紹介して欲しいって連絡あってね、、、、もうそろそろ仕事してみないかなと思って、、、。私が今、紹介出来るような人他にいないし、とりあえず試用期間だけでも、いってみなさい。いい?いつからいける?先方に連絡入れとくから。』

 ハイハイ、どうせこっちの意思は関係なく強制ですよね・・・この恩師は何かと気にかけてくれる、この世で絶対に頭が上がらない人の一人だ。
ただ、今までも、きっとこれから先も、必ず僕にとって有益な方向を示してくれる。

 「んー、じゃあ来週の月曜日からなら、、、」

 ・・・『わかった、細かいことはまたLINEしとくね。ちゃんと頑張るんよ!じゃあね。』


 「さすがに早すぎたかな、、、少し時間つぶして行くか、、。」
初日指示された出勤時間30分前、駐車場の一番端に止め、icosを何度も口に運び、緊張と不安をごまかしていた。
 
 動画チャンネルに気を取られて、全然気がつかなかった。真横に真っ黒のSUVが止まっている。メガネをかけた小さな横顔が視界に入った。
 ・・・めっちゃ、カッコいいなこの人・・・モテるんだろーな、ん?、いや、・・・女じゃね?マジかっ!カッコいいじゃねーな、なんて言えば、、、やっぱ、美人ってことよな、カッコいいということは・・・。
 
 

 いつものように今日の仕事の割り振りや注意事項を、端的に的確に伝えている。ショートカットとメガネがこんなにも似合う、カッコいい人、、、、間違いなく、好きになってしまっている。この人のこと。
 今日までの試用期間3ヶ月、ただこの人に会えるからここに通っていたようなものだ。正直、仕事の相性はそれほどよくなかった。きっと仕事に対しての、そういう感情は、勤務態度や言動にでていたのだろう。1週間ほど前、社長からオブラートに包みまくった遠まわしな退社勧告を告げられた。
・・・「じゃあ、来週の水曜日、今月の末までで、、お世話になりました。」
 
 3ヶ月、人生の無駄遣いしてしまったかな・・・今日で、最後か、、、もう会えなくなるな、、、答えのない自問を続け、この3ヶ月を振り返ってみる。満足も落胆もしてない。唯一の特別な思いの方も、何にも始まってないし、一方的な妄想以外に、あの人と共有できるものは何もない、、、。

 ここ数年は全く恋愛とか、縁のない生活で、正直やや諦めも入っている。
 ・・・今まで通り、何事もなかった感じで帰ろう。あーあ、すぐに忘れられるかなー、、、。
 いつものように、夕方の5時少し過ぎにタイムカードを押し、こちらのことなど気に留めていない様子で、彼氏の話を楽しそうにしている元同僚たちの横を、小声で「お疲れさまでした。」と言い、小さく会釈をして駐車場に向かった。

・・・ウソだろ?!

 「今日まで、お疲れさまでした。あと、ありがとうございました。短い間でしたが、居てくれた間は本当に助かりました。残念ですけど、これからも、元気で頑張って下さい。、、、、じゃあ、、、。」

 「あ、あの、こちらこそありがとございました。あなたが居てくれたおかげで毎日目の保養ができました。」

、、、終わった。
、、、何言ってんだ。
、、、バカか、お前は。
、、、次とか、一瞬で消えたな。

 何度目かの片思いが、自ら終わりを告げようとした。


 


 こっちの道から帰ろう。

確かこっち方面に帰ってたはずだ。もう一度あの人に会えたら・・・気づいてくれたら・・・何か始まるかもしれない。具体的には全然確信も無いけど、冷静に考えて何一つ始まりはしないし、どうかすれば、すれ違いざま、こっちに気づいてくれることすら無いと思う・・・けど。
 最後に声を聞いた、退職日から3ヶ月、帰宅時間が少しでもかぶっている日は、必ずこっちの道を通って帰っている。

 

 ・・・縁がないんだろうな。やっぱり。・・・そんなもんだよな。いつものことだよ。

 
 


 ・・・学生だった頃、初めての片思いが終わった。あれから何度、片思いを終わらしてきただう。
 
 



 あの日の放課後とよく似た夕暮れに、全力でプロポーズした夜、嬉しさと、緊張がまざってなかなか眠れない中で聞いたカミングアウト。

 、、、初めて知った。
あの駐車場から、2人同時に気持ちが動き出していたことを。
 思いをあきらめかけていた、あの3ヶ月、会える確証なんて全く無いのに、遠回りして、黒のSUVがこちらの帰宅する道の方向を選んでたことを。

 
 
・・・会えなかったわけだ。
・・・思いっきり、すれ違いじゃん。


 
すれ違った時間の長さが、なんだかすごく大切なものに思えた。



ナリスケ

10/16/2023, 2:07:49 PM

やわらかな光

 携帯の目覚まし音、ロボットのようなコンビニの応対、換気扇や空調が奏でる無機質、走る自動車、学生たちのバカ笑い、、、一日の始まりから終わりまで、自分でも気づかないほど小さな、硬く尖った小石ような不愉快は、いろんな音や形に化けて四方八方から問答無用にとんでくる。ココロの中に積もっていく。
 どんなにココロに平穏を言い聞かしても、どんなに無関心を決めこんでも、何処かに何かしら不愉快を感じない事なんて、、ない、、、

ココロガヒトヲスキニナルマデハ。

 微かに揺れるレースカーテンの前
で、安堵と安心を浮かべた寝顔で、幸せそうなうたた寝を透して見えるこの日常は、どんなに眩しい朝の光や、寂しさ溢れる夕方の光も、この変わりばえしない窓の外や、街の喧騒も、全部がやわらかな光にみえてくる。
 
 やわらかな光に包まれる度に、張り巡らしたココロの防御が剥がれ落ちていく。
 
 やわらかな光に包まれる度に、崩れかけた、ココロが支えられる。
 
 やわらかな光に包まれる度に、人を好きになる事の素晴らしさを、ココロが思いだしてくれる。

 あなたは誰に、やわらかな光をもらってますか?
 あなたは誰に、やわらかな光をあたえてますか?

 
 

10/12/2023, 1:24:33 PM

放課後

なんで、まだいるんだろう?
なんで、グラウンドの方見てるんだ?
なんで、、、?
 この世にこんなに可愛い子が存在している事に衝撃を覚えて2年と半年。
登校する意味の95%は確実にその存在が占めている。
 いつもの練習に全くついていけない。、、、なんで?、、、あれ?サッカー部?、、、サッカー部を見てる。
なんで?、、、まさか?いや、ウソ?
なんで、、、、?

 校舎を出て、駅まで向かう真っすぐの歩道、少し前を同じ方向に歩いて行く二人の後ろ姿。なんで、、、。

 
 あんな笑顔初めて見た。
こんなに誰かを思う事が嬉しいなんて。こんなに誰かを思う事が辛いなんて。
初めて知った。
初めて見る、あの笑顔、、、。

 
 あの日の放課後から止まったままの時間を、、、あの日からいくつもの偶然と偶然を演じた必然で、たどり着いたこのときに、、、全てを。
 
 
 内ポケットを何度も何度も確かめる。小さな箱の中で、小さな瞬きを放つ給料3ヶ月分。

 あの日の放課後と同じ、喧騒と夕暮れの待ち合わせ10分前。
 何度もココロの中で繰り返す、、、。

 
 僕と結婚してください。




ナリスケ
 


 

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