流れ星に願いをかけるかって?そりゃ当然!
気化する塵に願って叶うなら、断トツコスパ良いし。
#流れ星に願いを
ルールと言うと堅苦しくて。
なんだか見えないものに心身を縛られ不自由を強いられている感があります。
他のどなたかは知らないが、少なくとも私はルールと聞くと破りたくなる。
何も罪を犯すような事ではなく、ちょっぴり手を抜いたり、勝手に余裕を持たせたり、ふらふらしてみたり。
これも「ルール」というものに対する反発心でしょうか。……ぜひともそういう事にして頂きたい。ものぐさズボラとは違いますよ、ええ、ほんとうに。
それでもまあ、ヒトに限らずともルールを守ることによって守られているものがあるのは確かで。
尊厳やら、安全やら、権利やら。
あるいは此方と其方の身体もそうでしょう。
ヒトというある程度のルールを守った身体だからこそ、今、隣の人間から迫害されないのでしょう。
どうしましょうね。ある日突然、それこそグレーゴルのような目に遭ったなら。
貴方ありますか。意識外にある、それなのにとてもとても大切なルールから絶対に逸脱しない自信。
私にはどうにも無いのです。
もしも私がある日突然、得体の知れない、薄気味悪い、必ず排除せねばならない存在だと貴方の目に映ったなら。
ああコイツ、何か踏み外したなと、哂ってやって下さい。
#ルール
「これって、セケンイッパンではまちがいらしいよ」
「知ってる。ジョーシキとか、リンリとか、あと、ホンノーでしょ?」
「じゃあ、君は悪い子だね」
「じゃあ、君も悪い子だね」
堕ちることも、沈むことも、躓くことも、止まることも、惹かれることも、惹かれることも、拒むことも、諦めることも、ぜーんぶ間違いで。
そんなに間違いで溢れているなら、間違いじゃない人間なんか一人もいないでしょう。
そうしたら今度は、誰がより間違っているかの背比べ。
踏んづけなきゃ、踏んづけられるから。
でも、
踏んづけられて、踏んづけられて、ぺしゃんこになっても、守りたかったんでしょう。
じゃあいいよ。いいよ。
このサヨナラも、きっと間違いだけど。
このごめんねも、きっと間違いだから。
#たとえ間違いだったとしても
新月の晩、私には餌が与えられる。
「良い子にしてた?」
「…………」
「ああ、轡を外してあげて」
ひと月ぶりに外される口枷。けれどすぐには話してはいけない。
「語りなさい」
「……」
「語りなさい」
「……」
「語りなさい」
「…………おひさしぶりです、あるじさま」
「もうっ、面倒ね!」
今代のあるじさまは随分なお転婆で、千年前の取り決めをことごく「古臭い」「時代遅れ」「面倒」と軽んじている。
「この儀式もどうかと思うのよ。悪趣味」
「あるじさま」
「分かってます。さ、始めましょう」
よく清められた小刀の鋒で、人差し指の腹を裂く。
滴り落ちる、その一雫が私の餌。
跪き、仰ぎ見て、無様に乞い願う姿勢を取る。
憐れみと、蔑みと、少しの加虐心。目は口ほどに物を言うとは、よく出来たことわざだ。
「それじゃあまた、次の新月に」
「ええ、また、あるじさま」
良い子にしていましょう。その一雫のために。
#雫
お腹いっぱい。ほんとにずっとお腹いっぱい。
お高いシャンパン開けて貰って、今日はお父さんお母さんお姉さんがいるからね。子どもはいっぱい食べなって。
美味しかったんよ。めちゃくちゃ美味しくて。
話も楽しくてお腹痛くなるほど笑って。いつも物静かなお父さん()も珍しく笑って。
デザートまで二皿。
もうほんと、今何にも入らない。
何もいらない。
白湯飲んでストレッチしてマッサージしなきゃ……。
ほんとにご飯美味しかったの……。
#何もいらない