『明日、もし晴れたら』 No.108
明日、もし晴れたら公園にいこうね。
ママがそう言ったから
ねこさんの耳をつけた、じしんさくのてるてる坊主をまどにぶらさげて
お布団にとびこんだ
明日は晴れますように
ママと公園にいけますように
朝、目を開けるのが怖かった。
でも、いっぱいに開いた。
窓からはいっぱいのお日様が
おはようって言っていて
ねこさんのてるてるぼうすは
よかったね、って言ってた
『だから、一人でいたい』 No.107
どうしてか、わからないの
体が震えて
みぞおちがきゅっと、苦しくて
息がし辛い
どうしてか、わからないの
なぜ涙がとまらないのかな
なぜ私は見捨てられたのかな
なぜ私ばかり怒られるのかな
なぜ私だけがひとりなのかな
どうしてかわからないの
わかる、その日まで
だから、一人でいたい
『澄んだ瞳』 No.106
きんいろの日が映り
夕焼けに染まる
渡り鳥がぽつぽつと空をあおぎ
さざ波立てる 懐かしき海
雲一つ浮かばない夕空
貴女の澄んだ瞳に
そのすべてが輝いていた
『お祭り』 No.105
太鼓が響き
皆踊る
浴衣ゆらめき
下駄のからころ
景品めがけて
コルク栓
甘く立派な
りんご飴
夜の涼しい風が吹き
今宵は踊り明かしましょ
『神様はこう言った』 No.104
もうじきあなたはこちらへくるでしょう。
しかし、やり残したことはないのですか?
…はぁ、全くですか?
…そう、ですか……
車にはねられ、幻聴が耳に響いているようだった。
辺りが急に光につつまれ、光の中でも特に濃い光を放つ人影が、こう言った。
やり残したこと?そんなもの、ない。
むしろ引かれてラッキーだ。
死ぬべき人間は俺だ。死ぬ勇気をくれてありがてえ。
やがて光がぷつりとみえなくなり、とたんにものすごい眠気が瞼を誘った。もう、おわりか…
ざわめく観衆の声が遠くなり、視界が真っ暗になっていった。
あの時、俺が彼女を守っていたら─
やり残したことといえば、それくらいだ。
彼女は同じく交通事故で死んだ。
二人で映画から帰り、彼女と横断歩道で解散したすぐ後だったのに。あの時、ちょっと彼女との話を延ばしていたら…
でも、いいんだ。
これで同じ所に逝ける。
それでも神様はこう言った。
…そう、ですか……
別になにかあったのだろうか。
もう、いい。
いいんだ。