母は男の子が欲しかったので、男の子が生まれるまで産みつづけました。7人目で待望の男の子です。
次こそはと思い続けた結果女の子が6人です。
我が家は大変賑やかです。
待望の男の子である末っ子の僕は、姉たちの勢いにのまれ、いつも小さくなって、父とひっそり過ごしていました。
幼い頃も今も、姉たちは仲が良く、お互いに張り合ったり助け合ったりしながら一人ずつ結婚したり出戻ったりを繰り返し、一時は両親と僕という、静かな生活を送ることもありました。
そしてまた連休がやってきます。
姉たちが里帰りする連休です。
姉が6人ということは、お察しの通り孫が多いです。
一人につき平均2.5人として、と計算した所で憂鬱なだけなのです。過疎化が進んだ町の保育園より多いかもしれません。
そして我が家は根っからの女系なのか、孫もみな女の子です。これはもはや呪いといっていいのではないでしょうか。
父と僕の静かな日常が終わります
『嵐が来ようとも』
お題が大喜利みたいになっとるやないかい
『神様が舞い降りてきて、こう言った。』
おいミケ
あらミーちゃん
ちくわ!おいでー
オレには沢山の呼び名がある
なんでもいいよ
美味いものくれるなら
誰でもいいよ
主じゃないから
主はオレをなんて呼んだっけ
忘れちゃったな、主の声
なんでもいいよ
元気なら
『私の名前』
「おお勇者よ、死んでしまうとは情けない―――」
...........
もう何度目の目覚めだろうか
死んでも死んでも蘇らせられて
終わりの見えない旅を続けさせられている
「情けないならもう放おっておいて欲しいよ」
勇者はほとほと疲れていた
「もし、そこの勇者様」
「なんだ」
おざなりに振り返った先には一匹の魔物
本来ならば戦闘開始なのだが、勇者は疲れている
「随分お疲れのご様子
もしよければ我が里へいらっしゃいませんか?」
「里?魔物の里か、そんな場所へ行ったら余計に疲れるだろうが。御免だね」
「おや、お気づきではない?貴方様はとうに魔物となっておられますよ」
「なんだと」
聞き捨てならない一言に詳しく聞けば、繰り返される蘇生によって勇者の魂は穢れ、とっくにアンデッドと変わらぬ形となっているらしい。
「なんてことだ、俺は一体何のために今まで…」
「お気持ちお察しいたします。どうか我らの里にて心身ともに寛いで頂ければ幸いでございます」
気落ちする勇者は魔物の誘いを断る気力がおきず、魔物についていくことにした。
行き着いた先は小さいながらも穏やかで、魔物の里と言われなければわからないほど魅力ある里だった。
魔王討伐を命じられ過ごしてきた日々
挙げ句に魔物堕ちという結末に、勇者はやるせない気持ちを抱きつつも、どこかホッとしている自分がいることに気づく。
「此処では何も気にせず好きなように生活なさってください。ずうっと居て頂いても構いませんので」
魔物たちに歓迎された勇者は、こうして里に留まった。
..........
「今回も上手く引き込む事が出来ましたね」
「そうだな、あいつで何人目だ?」
「さあて、でもこれで勇者は居なくなったので暫くは我らの自由ですね」
「しかし全く哀れなものだ、次々アンデッドを生み出すあやつこそが魔物なのではないか」
「ええ本当に、怖ろしいですね。しかし仲間を増やしてくださるお方とも言えますから」
こうして、魔物の里は着々と繁栄されていくのであった
『目が覚めると』
死神は雪の深い夜街に辿り着いた
今日の職場だ
ローブ目深に網を持つ
鎌ではない網だ
この世界では死者の魂は網ですくい取る
ふよふよと揺蕩う光をそうっとすくっていく
粗方取り終えた死神は、人気のない路地に
少女を見た
粗末な服で、この寒さは凌げまい
少女の側でその時を待つ
籠に入ったマッチは古く、箱が潰れているものもある
少女は少しでも暖をとろうとしたのだろう
廻りにはマッチの燃えカスが散っていた
死神に掬い取られる魂は
こぼれ落ちたマッチとともに
今夜も街を彩った
『街の明かり』