こんはずじゃなかったんだが
わしはただ、似合いの男女の仲人をしただけじゃ
いい仕事したわと思ったんじゃ
なのに
今年もこの時期になると起こるデモ
【恋人同士を引き離す極悪人】
【二人の結婚を認めよ】
【年一なんて酷すぎる】
わかっとるわい
そりゃわしだってずっと一緒におらしたい
でも駄目だったじゃろ?
あやつらが二人でおるとイチャイチャして仕事せえへんし
そいで迷惑かけることのが問題じゃから
年一なのは苦肉の策
会議でもそう決まったじゃろが
なんでわしばっかり責められ―――
はぁ
会わせるんじゃなかったわい
『七夕』
下駄箱から外に出た瞬間、一人がクシャミをした
「眩しいとクシャミでるんだ、これって4人に一人らしいぜ」
「は、は?オレは冷たいもの食べても頭キーンってならない体質ですけど?」
「え、じゃあオレはゲップが連続で出せるね」
「オレはどの関節でも自由にポキポキできる」
「じゃあオレは、えっとえっと―――」
『日差し』
ああ、まさか君があの時の娘だったなんて。僕たちは運命だ
額の傷を見て放たれた一言に、
体中に憎悪が駆け巡った
赤い縄が繋がった相手が、貧しく貧相な娘と知って殺そうとした相手によくもぬけぬけと運命などと
でも確かにこれは運命か
再びこの男に巡り会えたのだから
忘れない
忘れられない
あの頃の恨み
この赤い縄をおまえの首に巻きつけてあげる
『赤い糸』
あれはサメ
あれは肉球
あれはお餅
雲を見上げるときなんて
めちゃくちゃ暇な時か
めちゃくちゃ参ってる時
あれは手形
あれは入れ歯
あれは――――
さて自首してくるか
『入道雲』
あの頃は
シャボン玉が飛べば屋根も嬉しくて一緒に飛んじゃうんだと思ったし
なんなら自分も上手に傘を使えば飛べると思った
サンタは本当にいて
クリスマスまではメモ帳持ったサンタの手下に見張られてると思った
組んだ指の隙間から勝てるじゃんけんの型が見えると思ったし
テレビの向こうではこっちが見えてると思って緊張した
じいちゃんとばあちゃんは産まれたときから老人で
飼ってる犬がいつか死ぬとか考えたことなかった
でもね
これは今でも思ってる
死んだら幽霊になれるから
上に行く前に会いに来て
見えなくても
絶対に会いに来て
約束したからね
『子供の頃は』