付き合っている恋人がいる
彼とはとても相性が良く、一緒にいると楽しいし落ち着く
となれば今後は普通に結婚して夫婦になるべく物事は進んでいくだろう
しかし、私にはこの先の未来に一つの杞憂があった
彼は愛用しているマグカップがある
保育園の時の陶芸絵付け体験で手に入れたものだ
幼児らしい絵柄と、彼の名前がひらがなで書かれているそれを、彼はそれはそれは大事にしているのだ
ある時、彼の家で洗い物をしている時、うっかり手を滑らせてカップを落としかけたことがあった
幸い割れることはなかったが、隣で食器を拭いていたあの時の彼の顔色は忘れることができない
それ以来私は彼のカップには一切触れず、彼もそれを良しとした
だが、結婚後の生活を考えるとその一つの食器をめぐって争いが起きないとは考えられない
私はいつか割るだろう
そんな未来が私の心に不安を灯すのだ
彼は優しい人なので、もしうっかり割ってしまっても怒ることはないだろう
むしろ怪我をしていないか気遣ってくれる気がする
私のこの憂鬱も、ただのマリッジブルーで、カップのこともこじつけにすぎないかもしれない
といことを考えて、気がついたら早8年
私は未だにプロポーズをされていない
今日こそそのマグカップ 割ってやろうかな
『マグカップ』
今日が最高の日でも最低な日でも、寝たら一段落。
新しい一日は、まだ何も成してないし、何も失敗がないし、まっさらなはず。赤毛のアンも似たようなこと言ってたな。
リセットされ続ける毎日は、気持ちばかりを置き去りに、無情にも繰り返されて、一喜一憂する人生となる。
確かにあった幸せは形を変えて、残像ばかりを追い、儚い思いは薄く散って視界は良好。
それでいい
『まだ続く物語』
山田 九斗 (56)無職
『cute!』
魔法が使えたら何をしよう
どんな魔法を使いたい
科学でできないことをしよう
お天気を自由自在に
時間や空間だって思い通り
「まるで魔法みたい」なんて
存在しないものに例える世界
ないものあります
それが魔法
『魔法』
今から反対言葉ね
やだよー
あーお腹いっぱい
なんにも食べない?
食べない!
チョコないからあげないね
えーんまずーい
昨日はお弁当いらないの?
いらなーい
寝坊しないぞー
たまにまずいよー
ざんねーん
あ、お風呂洗わないで?
いいよー
わーい洗わないでよー
じゃあ洗わないー
あー疲れない!
いつまでもやろうね
『逆さま』