ぺんぎん

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3/23/2023, 8:31:26 AM

幼い、というひと時はまぼろしのようにきれいで、また残酷だった、生まれついたその時から掛けられた輪のような呪いのようなそれに、首をきゅうと絞められたときはじめて、大きくなってしまった自分の愚かさを悟るしかないだなんて、
幼さは宝箱をひっくり返したような跡を残しながら光をあつめる、その美しさに見とれることもできず、歳を重ねることしかできないその事実が、完膚なきまでにわたしを壊した

3/18/2023, 1:39:45 AM

季節を忘れた雪がただしんしんと降り注いでつむじの間を通り抜けていった、それがわたしをいくらでも端へ追いやっていくような気がしてしまって
靴を履くのも恐れて、ひとりで長いこと、ソファに膝をたてていた
古い歌を聴いた、そうしてはじめてイヤホンをしたまま眠って、空のすき間に突き落とされる夢をみた

3/14/2023, 2:14:54 PM

春がわたしに確かに近づいてくるものだから、ちょっとだけ怖いことがある
思いきり尖った冷たさのなかで棘をなでるように指先を温めあうことの美しさも抜け落ち
身体のそばをはなれてしまう、春には、本当のあたたかさが分からなることがある

3/12/2023, 7:05:39 AM

つむじのてっぺんから擦れていくかんじ、わたしは日々をそれらしく生きていくことで
身体いっぱいに息を溜め込んで声をあげることも忘れた、自分をいつわるというのは自分自身を痛めつけることよりももっと遠くで鋭利になる、
ずれている、と言われることは気掛かりでわたしは押し殺す、

3/8/2023, 11:10:43 AM

彼女は薄い肩を震わせて、うずくまり細く泣いた、わたしは、ただほっとしていた
耐えかねない環境の中で命を延長させる絶望を、ちゃんと絶望だと認めてそれからその身体に備えた強さで、ただちいさく泣いてくれた彼女に僅かにわたしは救われたのだ

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