お祭り
不敵な笑みがヤバいの、ほんと
煩いくらいに瞬く灯が私の身を焦がし
君と私を温い夜が浮き彫りにする、君の端正な顔が瞳に滲む
なぜだろう、がやがやと動き出す人混みと弾む音に混じったはずの
僅かな私の鼓動しか聴こえないの
ちいさく頬張った綿菓子のように
手先が擦れあうそのたった一秒ですらどろりと甘くて病みつきになりそうで
心地よい熱が、提灯が踏みしめたアスファルトを色付ける
ああこの夜に浮かれていたい、君の傍に居たい
ぼんやりと乾いた夜の上に
灯を焦がす提灯の赤と
その片隅から溢れだしたはちみつ色
身体中を奮わせ、その音ととろける色に見惚れていた
耳許を転がる轟音たちに溺れるように恋をする
まばらにだらだらと熱帯魚の群れの如く
交わった人混みがぽつぽつ泡のように流れていく
この街の微熱の向こう、終わるな、終わるなと心臓を握りしめている
私の残骸を撫でた
まだ抗うことを知らない彼らは
傷付けあうのを恐れてただ小さな愛を胸に抱えていた
無題
鋭利なナイフでざくっと心臓をやられた、いや、そんな感じ
ぱちんと火花が音をたてて弾けたくらいの衝撃が今にも頭をがつんと殴り付けるのを
息さえも出来ずに見つめていた
身体中をはしる心臓が口からまろびでるんじゃないかと思うくらいに、
深く刺さった傷口からたちまち溢れだした
ばくばく阿保みたいに震えた鼓動を堪えていた
言うならば恋、それもとんでもないやつで
一瞬にして奪いさってくるの、身体のまるごと足許からひょいと
気づいたらもう虜、浮わついた気持ちを抑えるしかなくて
鼓動しか聴こえなくて、顔あっつくて、もう駄目
裂けた傷はぱっくり開くだけ、もうナイフは抜けないな
鳥籠の僅かに摩れあった冷たい音によく似た
やさしくて怖ろしい声ががんじがらめに纏わりつく、身体中が疼く
ふたり分、とぷんと波をたてたバスルームの中で
きっと湯気もたたないくらいの温度で溶けていく
ごぽごぽと続いて吐き出された痛々しい泡の音が耳をこびりついて離れないの