うだるような暑さが残る部屋
じりじり溶け合っていく氷のような
浮き上がった肩甲骨、僕の身体と
喉仏を上滑り、熱がするり抜け落ちて
柔く脆い貴方の双眸が重く怠い愛を帯びる
もっと甘い傷をつけて、貴方で浸されていたい
愛を強請った僕は貴方の匂いに満たされていた
ほの暗い部屋で
ふたりまるで馬鹿みたいに愛し合った
じくじくと膿み続ける傷を舐め合うように、喰い荒らすように
水槽でそよぐめだかの泡のように、ぽつりぽつり愛を乞うた
どっぷりどす黒い泥濘にいつまでも逃げ続け
ぬるくなったバニラアイスを食んだ
いつまでも甘い
蒸し暑い室内、窓からうっすら風がそよぐ
吐息混じりの媚声が絡み付く
沈黙が続く、それでも行為は続く
端整な顔をぐしゃりと歪め、それでも行為は続く
生ぬるい雨が身体をまとわりつく
がらんとした部屋が熱を帯びた、真っ黒な眼を揺らし、ぐったりと果てた
ふと気がついたように彼は今までの行為を怖がるような様子になって
ごめん、ごめん、と震えた声がこだまする
口の奥のあつい愛を否定するかのように、吐いて、と彼は促した
もう一人の、貴方の愛を
飲み干したくなかった、でも吐き気はしなかった
促されるまま吐出物が喉奥を滑り落ちて真っ白に磨かれた洗面台に落っこちた
鳩尾のあつい塊がせりあがる
熱を奪っていくペットボトルの水、後味が苦い
とくとくと鼓動があがってきて甘い口づけを交わした
どちらの貴方も好きなんだけどさ、
薄手のTシャツからにょきりとはみ出た
細くて細くて、まっさらな腕
手のひらでぬるくなったアイスクリーム
味のしているようなしていないようなシロップ
彼はわりと端整な顔立ちだったのだ
へにょりと形を崩した甘味を頬張った彼の手首を甘く白い筋がつたう
じりじりと熱を持った頬が赤みを増す
どきりと彼の味に翻弄される
君にしっとりと浸されていく
じりじりと熱の寄った身体がさあっと冷えて
細やかで優しいビニール傘越しの雨音が
吐息と、君の震えた声と、交わって重なって
雨粒にのまれた肩の冷たさがあとになって追ってくる
その感触が痛いくらいに君の形がこびりついた頭は
温かい愛情を待って、まっさらな霧のなかで痛みを必死に擦り付けている
視界を遮ったのが、涙か雨か分からないくらいにつらい雨だった