ぺんぎん

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1/21/2022, 10:32:54 AM

また1つ歳をとる。
お一人様だからこその贅沢。
小さな頃憧れたホールケーキは、今食べると胃もたれしちゃうかも。
やっぱ定番のショートケーキ。
こぢんまりとした一軒家で独り。
そんな人生も、わりと悪くない。

きらびやかなケーキをちょっといいお皿にのせて、
金色のきらきらフォークをさくりと刺してみる。
甘ったるいクリームがスポンジと絡まって。
センターに立つのは真っ赤に熟れた苺。
何を食べても、これが一番。
幼い頃のきらきらしたような誕生日ではないかもしれない。
でも、こういうのが案外楽しいんだ。
''お誕生日おめでとう''




『特別な夜』

1/20/2022, 11:00:08 AM

最後に会った貴方は、
誰かの香水の匂いを漂わせていた。

ネオンがそこらじゅうの海に反射する。
へらへら笑った貴方の顔が目に浮かぶ。
癪で仕方なかった。

あの日二人で買った婚約指輪。
あの時は、幸せだった?
いいなあ。
なんだか妙に苛々して、手の中にある冷たいものを投げ捨てた。
宙を舞って、音を立てず沈む。
どんどん、海の底に、真っ暗の中に溶け込む。
ああ、清々した。
今の自分には必要じゃないはずだ。

自然と、足はあの人の家の反対を向かう。
どうやらもう二度と、あの家に帰る気は無いらしい。 
帰りにコンビニでコーヒー買ってかえろ。甘いやつ。

1/19/2022, 11:00:23 AM



あまりに殺風景な病室。ベッドの上。
余命はあと幾つか。
告げられたその日から、私は人の写真を撮ることにした。

君はいつも私と一緒に写真を撮るお手伝いをしてくれた。
沢山の人が来て、皆が笑っている。
フィルムの数が減る度、笑顔が溢れた。
嬉しかった。

枚数はあと1つ。
一番最後は、君と撮らないと。

――あれ、何でかな、写らないの。
君は笑った。その笑顔は私にしか見えてないの?
君の影が薄くなって。
綺麗な涙がひとすじ。
君はまた笑う。初めて見たときの春風のような顔で。

1/18/2022, 10:18:28 AM

ああ、やめてくれ。
彼女にその日記を見せないでくれ。
彼女の記憶を呼び起こさせないで。

幸せで居たいんだろ。
彼女は、なにも知らないままでいい。
もう、やめてくれ。
その日記には――




『閉ざされた日記』

1/16/2022, 10:10:00 AM

君が微笑む。
まだ早い春風に、つぼみのままの花
きつく結ばれた糸がほどけていくよう。

桃色のやわらかな花びらがちらちらと舞った。
心があったかくほころんだ。

ああ、君が好きだよ。

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