最後に会った貴方は、
誰かの香水の匂いを漂わせていた。
ネオンがそこらじゅうの海に反射する。
へらへら笑った貴方の顔が目に浮かぶ。
癪で仕方なかった。
あの日二人で買った婚約指輪。
あの時は、幸せだった?
いいなあ。
なんだか妙に苛々して、手の中にある冷たいものを投げ捨てた。
宙を舞って、音を立てず沈む。
どんどん、海の底に、真っ暗の中に溶け込む。
ああ、清々した。
今の自分には必要じゃないはずだ。
自然と、足はあの人の家の反対を向かう。
どうやらもう二度と、あの家に帰る気は無いらしい。
帰りにコンビニでコーヒー買ってかえろ。甘いやつ。
1/20/2022, 11:00:08 AM