ぺんぎん

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あまりに殺風景な病室。ベッドの上。
余命はあと幾つか。
告げられたその日から、私は人の写真を撮ることにした。

君はいつも私と一緒に写真を撮るお手伝いをしてくれた。
沢山の人が来て、皆が笑っている。
フィルムの数が減る度、笑顔が溢れた。
嬉しかった。

枚数はあと1つ。
一番最後は、君と撮らないと。

――あれ、何でかな、写らないの。
君は笑った。その笑顔は私にしか見えてないの?
君の影が薄くなって。
綺麗な涙がひとすじ。
君はまた笑う。初めて見たときの春風のような顔で。

1/19/2022, 11:00:23 AM