9/14/2025, 11:08:58 AM
今年で七歳になる息子は、今夜も外に出て月を眺める。
「あ、今日は満月なんだね!」
お風呂上がりで火照った頬は、今は別の理由から赤く染まっている。去年の出会いから、彼はその人のことで頭がいっぱいなのだ。腰に手を当てて、遠慮がちに牛乳を飲む。瓶を両手で持ち、一、二、三と、嚥下をする。夏の不快な湿気から生み出される熱帯の風を身体で受けながら、一言呟く。
「今日は、お姫様。かぐや姫様はいるかなあ」
今日は満月だ。ビー玉のように丸くて、不揃いな大きさをしているクレーターに姫は住んでいるのだろうか。大人になった私には、もはやわからないことだが。
「姫様! お姫様!」
牛乳瓶を逆さまにし、望遠鏡のようにして息子は月を見る。将来は天文学の重鎮かもしれない。
君と見上げる月。私はやっぱり月ではなく、その時まで君を見守っていようと思う。
お題 : 君と見上げる月…🌙
9/14/2025, 8:59:52 AM
なんでもない空をそこに描いた。
地べたに転がる絵の具を足でたぐり寄せ、屈んで手に取る。筆は使わない。掌に青色の水彩絵具をしぼり、真白なカンバスを撫でて色を塗りつける。幼子の落書きのように、揚々と。
窓から日光が差し込むだけの薄暗い部屋に、スカイブルーが舞い込む。それは、森林の中で香る木々の温もりや、午後の海岸で感じるノスタルジックな幸せに近しい。隙間があればそこに入り込んで、抱擁のように温めてくれる。身体が、檸檬やサンダルウッドのような爽やかな香りで、満たされるような気がした。
僕は画家でも、ましてや芸術家ですらない。日々を生きる一般的な個人に過ぎず、アイデンティティなんてものも、自覚できるほど素晴らしくはない。
それでも僕が絵を描くのは、その行為が心の空白を埋めてくれるのを、単に願っていたからだった。
お題 : 空白