ページをめくる
真新しい本のカバーは、シンプルな装丁で、目を奪われる様な派手さは無い…でも、そのシンプルさに、何か心惹かれるものがある…
最近には珍しいハードカバーで、手に取ると、本の厚みの割にはずっしりしている…
表紙をめくると、インクの匂いが鼻腔をくすぐる…この、真新しいインクの匂いも好きだけれど、古本の、あのカビ臭さも、好きだな、なんて事を思ってしまう…
目次の後をめくると、そこには、なんだか懐かしい様な、軌跡を描いた物語が紡がれている…
夏の忘れ物を探しに
今日から9月…と言っても、大して昨日と変わらない…暑さも、昼間の陽射しも…
でも、空の色も、朝夕の気温も、少しづつ、確実に変化している…秋の足音が何となく聞こえるような気がする…
秋の気配が感じると、何となく、何かを忘れているように心がざわめく…毎年の事だけれど、それが何なのか、考えるうちに忘れてしまう…秋には、秋の何かが、待ち構えているから…
8月31日、午後5時
今月の上旬に、立秋になったけれど、気温は、秋の気配かない…ジリジリ照りつける陽射しや、蒸せるような空気、五月蝿い蝉の声…
まだまだ夏の真っ盛りの8月…でも、お盆あたりから、気持ち夜が凌ぎやすくなって来た気がする…
そして今日が、8月の晦となり、降り出しそうな空模様なのに、雨にならない午後5時…昼間の茹だるような熱気を残したまま…
ふたり
あなたとふたりきり…夕陽に照らされて、長く伸びる影法師にも、寄り添い乍ら歩いている…繋いだ手も、絡めて、ギュッと離さないね…
そんな事を妄想しながら、1人ボッチの帰り道…あなたは、他の友達と一緒に、先を歩いていて、わたしの存在すら知らない…
違う学校の制服を着たあなたに、なかなか声を掛けるきっかけすら見つからない…
本当は、あなたの横にいるのは、わたしだけになりたい…優しい眼差しに見つめて欲しい…
心の中の風景は
小川に架かる木製の橋、欝蒼とした木々の隙間から溢れる木漏れ陽、小川の中には、大きな魚が群れをなしている…
子供の頃から、時折見る夢の中の風景…でも、そんな場所の記憶なんて何処にもない…その景色は、幼い頃から、ほぼ変わらないし、凄く懐かしくて、帰って来たようなそんなホッとして、温かい気持ちになれる場所…
その前後は何もなく、突然其処にいるだけで、特に何するわけじゃないけど、夢から覚めても、何故だか幸せな気持ちでいられる…
不思議な風景だけど、いつか行ってみたい…