記録
段ボールに詰め込んだ、古い大学ノート…中学生の頃から、二十歳過ぎ迄、書いていた日記…
中学生の頃、たまたま図書館で出会った、闘病や自死した人たちの日記の本に、何気に触発されて、書き始めた…自分日記なので、大した記載も無く、ただ日々の事を、記録しただけの内容ばかり…
読み返すと、ただ恥ずかしいだけで…でも、忘れていた事を、思い出すきっかけにもなり、少しだけ、懐かしい時間を取り戻した気分になれる…ちょっとした、自分だけの記録…
さぁ冒険だ!
この道を行くんだ…そう思い乍ら、だだっ広い草原に立つ…風にそよぐススキが波打ち、遠くに見える山々の連なり…
所々にある、獣道以外には、道なんて無くて、自分で歩いて行くしかない…なんだか、地図のない冒険みたい…1人で、五感を研ぎ澄ませて、この先に待って入れくれる、あの人に辿り着く迄…
1輪の花
控えめで、奥ゆかしい香りの、白梅一輪…毎年、冬は、枯れたようになる、一本の老梅…
毎回見かける、その梅に、小さな蕾が目立ち始めた…未だ固く閉じた姿は、よく見ないと、気付かない位だけれど…
去年も、一輪目の梅花は、凛とし乍ら淋し気で、色の無い、池の畔に、静かに彩りを添えていた…
そのうち、今年も、また、そんな愛おしい白い姿が、春の便りを、呼び寄せるだろう…
魔法
子供の頃、魔法を使う、女の子のアニメを、よく見ていた…空を飛んだり、変身したりして、悪者をやっつけるのが、カッコよくて、羨ましいと思っていた…
箒に跨ってみたり、短い棒を振り回して、呪文を唱えたり、アニメの少女みたいに、沢山試してみたけれど…
矢っ張り何も出来なくて、そんな自分に、哀しくなった…
でも、周りの大人は、魔法を使わなくても、色々出来て、凄いと、思えて来た…そうして、いつか、魔法の事は、諦めたけれど、お母さんの優しい手が、魔法みたいに見えて、魔法より、お母さんの手が好きになっていった…
君と見た虹
あの、雨上がりの夕方、久しぶりの虹は、大きくて…思わず、隣の君の手を掴んだね…
あの日、初めて二人で、出掛けた遊園地…午後から、突然の雨で、少し雨宿りして、観覧車に乗って…段々景色が下に拡がり、空が近くなる…その、視界の先に、鮮やかな橋が、空に架かっていた…
会話が途切れて、何か言おうとしていて、言葉を探していた時で、この七色のアーチが勇気をくれた…
君と一緒に見た虹…今でも、鮮明に憶えているよ…