黄昏
久しぶりに、この防波堤に来た…夕陽に照らされる桜島を眼前に、少し白波のたつ錦江湾の潮風…見慣れた風景なのに、数年振りに見ると、涙腺が緩んできた…もう齢を重ねた所為だろうか…人影のないこの空間が、淋しくて何故かホッとする時間に抱かれている…
屹度明日も
まだまだ残暑厳しい…間もなく10月なのに、茹だる様な暑さにうんざり…道端に揺れる秋桜も、曼珠沙華も、心なし元気がない…グズグズ歩いていると、向こうから、人影が見えた…滅多に人とすれ違うことがないこの道で、しかもこの時間に歩くのは、あの人…一寸緊張しながら、確認すると、矢張りあの人で…今日こそは、とついさっき迄思っていた決心は、何時ものように、心の奥に引っ込んでしまった…多分、明日も…
静寂に包まれた部屋
今夜は十五夜…久しぶりの満月の十五夜らしい…窓越しに見える月は、少し雲が架かって、どこと無く寂しさを感じる…特に親しい友人も、寄り添う恋人も居ないから、ただ一人、薄暗い部屋から月を見上げる…静かな部屋に、よそよそしい月の光が満ちてきて…
別れ際に
何時ものように、夕暮れの道を並んで歩いている…もう、どのくらいなるだろう…他愛もない話題で笑い乍ら、何時もの交差点迄ゆっくり歩く…話し乍ら、君の横顔を見るのが、秘かな愉しみで…半分上の空の反応に、時々頬を膨らませるのも、可愛くて…そうして、あっと言う間に、別れ道になってしまう…じゃぁ、と手を振る度に、想いを告げたいと思い乍ら結局、また明日って終わってしまう…明日こそは、と…
通り雨
さっき迄晴れていたのに…空を見上げると、向こうには青空が広がっている…取敢えず逃げ込んだ大きな木の下に、君も走って来た。何時ももの静かな君が、珍しく息を上げている…何となく声を掛けると、少し驚き乍らも、小さく頷いてくれて…普段余り言葉を交わさないから、変に意識してしまう…幾つか言葉を交わして居ると、そのうち雨も止んで、さよならした…