空を見た海月

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9/12/2024, 3:13:59 AM

手をかけた。
今日で終わるこの仕草に、人は悲しみを覚えるのだろうか。
…人じゃない私には分からないけれど。
悲しみを覚えるように願いながら、途中で最後の日付をめくる。
昨日、遂に訪れた。
世界の転換期。
一番にあの子が消えたのだから、次は――
カレンダーを置いた。
最初で最後の祈りを捧げるため、私は家を後にする。
いずれ風化するであろう家を後にした。

そして私は
手をかけた。
不思議と息苦しさはなかった。
だって私は
人じゃなかったから。
カレンダーのように、

消耗品だから。

8/1/2024, 3:06:32 PM

ぽつぽつと弱い雨が、病室の窓から降ってきていた。
その雨さえも愛おしいかのように笑う君に、明日の保証はない。
彼女は告げられた期限をとっくに越していたからだ。
…だんだんと細くなる指も
だんだんと弱々しくなっていく声も。
赤く腫れた目元にも、
私は全部気付いていた。
君も知っているのだと分かっていた。
だから私は未来を話す。
君の見れない未来を話す。
「明日、もし晴れたら。花見に行こう」
そう、確証のない未来を話す。
その瞬間だけでも君が未来を見れるように。
…その瞬間だけでも君が未来を生きれるように。
私は今日も口を開いた。
明日、もし晴れたら。って。

7/31/2024, 3:28:50 PM

ある夏、君が死んだ。
何の前触れもなく、ただ水に溶けるかのように静かに死んだ。
君の葬式は粛々と行われ、誰も何も触れないままで一年が経った。
君は自殺ではないというけれど。
事故死だから不可抗力だと言うけれど。
私の心には深い傷が残ったんだ。
…深い海が出来上がったんだ。
こんな状態じゃ、君に会えないよ。
こんな状態じゃあ、何も話せないんだよ。

だから、一人でいたい。

7/29/2024, 3:50:40 PM

「心から愛するって難しいけどさ、その言葉を発する時だけは本心で言えたら良いよね」
大人ぶった事を言ったあの子は今、この世にはいない。
君の最期の言葉を思い出す。
「愛してるって言えたら良かったのに」
君は誰かを愛せなかった。
だけど僕は君に言えるよ。
「愛してる」
例え嵐が来ようとも、
例え人類が滅びようとも、
例え世界が滅亡しようとも。
僕は君を愛しているよ。