いつも同じ場所で、同じ言葉を交わして別れる。
大切な親友がいた。
小学生の時からずっと同じ学校で、同じ時を過ごしてきたから。
私達は、
卒業式の日でも、言わなかったから。
それが続くんだと思っていたけど。
もう違うみたいで。
おとなになったあの子は、もう「またね」とは言わなくて。
散りかけの桜の中、彼女はゆっくりと口を開いた。
――さよならは言わないで。
あなたのその優しい目が好きです。
あなたのその柔らかい声が好きです。
あなたのその手が好きです。
あなたが、好きです。
告げた言葉は夏に置き去りなのに。
私の想いは引き摺られている。
諦めなんてつくはずがない。
つくはずなかったんだ。
春の温かさ程ではないけれど、今もなお残る暖かさは。
来年まで大事に持っておく。そう、決めていたのに。
時が経つにつれ失われていく温度。
色鮮やかに見えた世界から、失われていく色。
紅葉の木には葉がなくて。
流石に気づいてしまった。
あぁ、これが冬のはじまりなんだな。と。
全ての人を愛する。と宣言した、
君の行動に口は出さないつもりだった。
愛を知らない僕には出す権利もないと思っていた。
だけど、それは間違いで。
口に出さなかったから君はいなくなって。
僕が気づかなかったから君はいなくなっていて。
君は――見にくいくらいの愛情を、くれていたのに。
あなただけのことは愛せない。と、嘘をついていたんだね。
嘘は愛じゃないのに。
君は君なりの信条を、愛に変えていたんだ。
――それならば
君の言った通りなんじゃないだろうか。
君は僕だけを愛することはできなかったけど。
皆に愛を送る事はできたんじゃないだろうか。
そしてその行動で、僕に愛を示した。
不器用な君が、見せた嘘。
不器用な僕が吐いた真実。
君はあいだった。
君の行動で僕の信条が変わるわけじゃない。
君はとてもちっぽけで、無力な存在だったからだ。
だから僕は今でもこう思う。
嘘は愛じゃない。
愛は嘘じゃない。
だけど、嘘も
「愛情だ」
木枯らしが吹き、日一日と秋が深まっていくようです。
その後ご無沙汰しておりますがお元気ですか。
つい先程までそんな言葉を綴っていた筆は、既に停止している。
――あれ程まで望んでいた機会だというのに
続く言葉を考える事もせず、私はそっと窓を開けた。
終わりかけの秋の風が部屋を覗き込む。
それで、何かが吹っ切れた。
息を吸い、
筆を折り、
言葉の残る手紙を丸め、ゴミ箱へ投げる。
私の恋はもう終わったのだ。
新しい出会いに喜ぶ春ではなく、
全力を尽くす夏でもなく、
春を待ち望む冬でもなく。
ただ終わったこと、終わっていくことを実感するだけの秋。
あまりにも醜い。
だから彼への想いは全て捨て、冬へ向かうべきだろう。
――そうだろう?
そうやって思って手をかけたのは、
水に濡れたセーター。
あの人の乗った飛行機よ、どうか墜ちてくれ。
皆が同じ方を見る中、私は一人そう願った。
私の心は既に堕ちていたのかもしれない。
名誉を抱えて出ていったあの人に、こんな願いを抱くなんて。
私はなんて愚かなのだろう。
私達はなんて愚かなのだろう。
分かってはいるけど、願わずにはいられない。
優しいあの人が誰かを殺める前に、あの人がいなくなってしまえば。と。
――だってもう終わりじゃない
何も聞かされてはいないけれど、
聞くことはできないけれど、
私達は終わっている。
もう勝機などないだろう。
ねえ、どうせ叶わぬ願いなら。
いっそ、あの人があの人である内に死んでしまえたらな。
なんて。
どうせ叶わぬ願いだったから。
やけに冷たい風の中、
落ちていく。