小音葉

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2/22/2025, 12:21:45 PM

在りし日の君を覚えている
穿つような雨の中、振り上げた拳を

肩を組んで笑い合った日々、
澄んだ瞳で囁く愛、
全て裏切る紫煙の味を、知っている

こんな日が来なければ良いと願っていた
膠灰に褪せた色が、いつか消えても
斜陽を超えて、嘘だと笑う君を待っていた

瓦礫の下から届けよう
墓無き君へ捧ぐ七色、記憶の大樹を焼いた劫火
今度は遮るもののない世界で、漣を聴こう

(君と見た虹)

2/21/2025, 12:38:51 PM

例えばこれは最後の瞬き
次の呼吸で点火して
この身が燃えて落ちるとして
流星のように心を裂いて
ひとすじ、傷を残せるのなら
悪くないね、とあなたは笑う

雲のドレスを渦巻いて
銀の瞳であなたは踊る
五線譜を跨いだ足跡は
煙のように、影も残さず
私の願いは叶わない

星になどならなくて良かったのに
身を焼く痛みで帰ってほしかったのに
あなたは地で生まれ、這って育った
神になどならない
神になどならない

私を見て、立ち止まれ
天を嘲り銀を手に取る

(夜空を駆ける)

2/20/2025, 10:48:34 AM

私は鏡
望まれるまま、笑いましょう、歌いましょう
崖端の彼女を抱き締めて
魚になった彼の為に祈りましょう

私は光、願いの形
救いましょう、施しましょう
賛美の言葉も贖いも、瞼を伝い等しく積もる
妬み嫉みは蜜の味
踏まれた影に口付けを

誰に愛されても
私は独り
破片の刺さる肉は尽き
焦げた臓腑は蠅のよう

私のことを、知っている?

(ひそかな想い)

2/19/2025, 1:31:33 PM

甘い雫も枯れる頃
踵を鳴らして飛び出した
地図もコンパスも持たないで
鈴のように私を奏でる

昨日はあの人、今日はあなた
行き交う、出会う、知らない誰かが私の導
人じゃあなくったって構わない
明日の色はまだ知らない
夢見る季節が終わっても、嵐のように私は鳴るわ

辛いモノも嫌いじゃないの
風のまにまに私が響く
花舞う都、さざめく街よ
あなたの名前を、教えて頂戴

(あなたは誰)

2/18/2025, 11:49:55 AM

あなたが私を愛した時
私はあなたを憎んだ

あなたが私を守った時
私はただ崩れる背を見送った

あなたが私を求めた時
私はあなたを忘れ白い海を飲んだ

否、否、否
幾星霜、時が流れようとも
繰り返し言葉を、刃を、熱を交わすのだろう

拝啓、彼方で私を待つあなた
星に臨む蕚から
この声が届いているのなら

どうか答を
もう一度、燃ゆる季節を

(手紙の行方)

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