チャレンジ56(命が燃えつきるまで)
わが家の庭に、蜘蛛の巣ができた。2本の木の間を渡してある。大人の腕よりも幅が広い。壊してしまうのは簡単だが、蜘蛛の努力に惹かれたので、そのままにしてある。先日の雷雨に耐え、外周が少しずつ大きくなっている。蜘蛛の命が燃えつきる日まで、サイズが拡大するかもしれない。
チャレンジ55(夜明け前)
明け方の、空が明るくなる時が好きだ。新聞配達のバイクの音。新鮮な空気。近所の奥さんが、早くもウォーキングをしている。空が明るさを増して、ひとすじの光が射してくる。新しい朝だ。
夜明け前がいちばん暗い、という言葉を残したのは誰だっただろう。ヨーロッパの格言だった気がする。
自分が暗闇の中にいる時は、何を言っているのか、と腹立たしい気持ちだった。少しくらい明かりがあっても救われない、ずっと悩むに違いないと思っていた。わずかに変わっていく空の色に、気がつくことができなかった。いま思えば、状況はゆっくりと好転していたのかもしれない。年を取って、夜明け前の空を眺められる心の余裕ができた。
チャレンジ54(本気の恋)
相手のことを考えると胸が苦しくなる。涙が出る。ときめくより悩むほうが多い。本気で相手を思うのは、切ないことだと知る。
想いが届いても届かなくても、それが本気の恋だと思う。長い夜を耐える切なさである。
チャレンジ53(カレンダー)
本屋のレジ近くに置いてある、名刺サイズのカレンダーを、最近見かけない。携帯が普及したからだろうか。半年で1枚になっていて便利だ。書店そのものが減っているのも寂しい限りである。かくいう私も、スマホで予定を確認することが多い。偉そうなことは言えない。
チャレンジ52(喪失感)
先日、いとこから電話があった。
もう3回忌だから、おふくろの法事、やろうと思って。あんまり人は呼ばないけど。
いとこの母、つまり私の伯母は、96歳で亡くなった。いとこは長男にあたる。伯母は90歳頃までは自活していたが、最後は体が弱り、老衰で亡くなった。いとこは仕事のかたわら、母親の世話をした。それでも喪失感は強く、葬儀の3ヶ月後に体を壊した。
やれるだけのことをしたから悔いはない、と語っていたが、彼の悲しみは、やはり強かったのだ。親を亡くすことはつらい。いまも喪失感を感じるかもしれない。法事をすることで、悲しみが鎮まることを願う。