チャレンジ55(夜明け前)
明け方の、空が明るくなる時が好きだ。新聞配達のバイクの音。新鮮な空気。近所の奥さんが、早くもウォーキングをしている。空が明るさを増して、ひとすじの光が射してくる。新しい朝だ。
夜明け前がいちばん暗い、という言葉を残したのは誰だっただろう。ヨーロッパの格言だった気がする。
自分が暗闇の中にいる時は、何を言っているのか、と腹立たしい気持ちだった。少しくらい明かりがあっても救われない、ずっと悩むに違いないと思っていた。わずかに変わっていく空の色に、気がつくことができなかった。いま思えば、状況はゆっくりと好転していたのかもしれない。年を取って、夜明け前の空を眺められる心の余裕ができた。
9/13/2024, 12:43:55 PM