10年前の私へ
人類の機械文明が進歩し、手紙ぐらいなら一般庶民の私でも送れるそうなので送ってみました。
私は3ヶ月ほど前に病気が見つかりました。
未知の病です。多分これ死ぬね。
こんなに進んだ未来なのに直せない病期なんだってさ、こんな不運があったんだから宝くじ買えば当たるかもね。
私ね、実はこの病気の原因に心当たりがあるんだ。
今手紙に書いて10年前の私に送ればきっと私まだまだ長く生きれると思う
けどね、私後悔してないんだ。
あの出来事。
あれを変えないなんて思わないけどね、怖いものは怖いんだ。死んだら何が起こるかわからないし、
ごめんね、不安になっちゃうよね。
けど、大丈夫この先の未来は君が後悔してない未来だから
未来の私が言うんだもん。信じてよ
誰かに聞いて欲しかったの弱音を
だからありがとう。
これからの人生楽しんでね
目を閉じ風を感じ深呼吸をする
夜中に吸う空気はとても心地よい
目の前に光る満点の星空を見て意気込む
「さて、送ろうかな」
そう言いながら私は空にライトを上に掲げる
空にモールス信号を送る、見てもらうために
・・ ・ー・・ ーーー ・・・ー ・ ー・ーー ーーー ・・ー
ーー・ーー ・ー・ー・ ・ー・・ ・・ ・・ーー・・ ・ー・ーー ー・・ー・ ーーー・ー ー・ー・・
用意してあったポットにお湯を注ぐ
左手に熱が伝わる暖かい。
右手に握るは沢山の薬
明かりになったあなたへ
私の言葉は届いたかな
明かりになったあなたへ
あと少しで宇宙を飛べるようになるから待っていて
全てをお湯と共に飲みこんだ。
薄れてきた意識の中見えた星空の1つが点滅しているように見えた。
あなたなのか分からないけど
あなたに届いて欲しい。
頭が働かない、怒ってるかな悲しんでるかな
でも、そんなあなたの言葉も私はあなたの口から聞きたい。
今夜はどう過ごそうか、
夜通しゲーム?映画鑑賞?闇鍋?
思いっきり酒を飲んで暴れ散らかすのも楽しそうだ。
外に行って酔っ払い達と何が面白いか分からず
とりあえず盛り上がるのもいい。
車で行くあてもなくとりあえず
今夜行けるところまで飛ばすのもいい。
君と静かに過ごすもの、騒がしく暴れ散らかすのも
どっちも楽しい。
君は僕の知らない世界を見せてくれるから
僕の「ミッドナイト」
ある日いきなり「あなたのそういう所が嫌い」と友達に伝えられた。
「嫌い」それは私が初めて言われた言葉で、私が記憶している通りだと好きでは無いもの、嫌なものに言う言葉だ。
私はあの子に嫌われている…?
とりあえず その場では、「あはは…」など軽く笑った。
それを聞いていた他の2人がそれは言い過ぎなどと
言っているからあの言葉は冗談などでは無いのだろう、
彼女達があの子に注意してる。
その事実がこれは事実なのだと私に突きつける。
私の頭の中はずっとあの子の「嫌い」その一言で埋め尽くされていた。
私は嫌われている、中学生と言う子供から大人へ移り変わる言わば1番心が変わる時期に友達だと思っていた子に
発せられたその一言は私を落とすものには十分過ぎていた。
私は嫌われる存在、
今まで何も思っていなかった会話の中に私がどう思われているか、その情報を集めようと脳と五感が動く。
退屈そうではないか、私の話に心から笑ってくれているか、私の身だしなみに嫌われる部分はないか
匂いは?見た目は?仕草は?
そして、この不安を目の前の子に伝わらないように全力で笑う、微笑む、とにかく口角を上げる。
ずっと頭が動いて不安を取り除こうとするけど、逆にどんどん不安が膨らんでいく。
家に帰って脳に残るのはあの子の「嫌い」という発言。
どんどんあの子が憎らしく思えてくる。
いつもと変わらぬように話しかけてくるあの子が、
とても気に食わない。
どんどん 私から話しかける事はなくなって、
そして学校にも通わなくなった。
周りの人々が全員が私のことを嫌っているようにしか考えられない。
私の行動一つ一つが周りの人をイラつかせる原因にしか思えない。
私の見た目がとても醜いものにしか思えない。
私の全てがとても嫌いだ。
家に引きこもりになってしばらく学校から距離を置き
自分の事を嫌いには思わなくなった。
学校に行けるかと言われればNOだ。
あそこに行けば私はとても醜い、嫌われ者の化け物になってしまう。
親の提案で職員室まで行ってそのまま帰ると言う特殊な学校の行き方をする事となった。
ずっと家にいると体力が無くなるし、学校に少し顔を出せば出席も取れる
それならと行ったら親はとても喜んでくれた。
チャイムを聞くと逃げ出してしまうようになってしまったが…
そんなある日のこと、私が家でテレビを見ていると
とあるタレントが軽い雑談をしていてその内容が友人との付き合い方であった。
(○○さんは軽く俺それ嫌いとか言いますよね、あれなんでですか?)
(それはな、俺がそいつの事をもっと好きになりたいから。もっと好きになって長い間一緒に過ごしたいからそこは嫌いだとハッキリ言うんだ。それでもっと好きになる。)
初めて聞く考え方だった。
そっか、そう言う事だったんだ。
あの子の嫌いは私の思っていた嫌いじゃない。
私の傷つける痛々しい嫌いではなく、もっとふらっとした洗濯したてのタオルのような、
柔らかさと温かさを持っているのだ。
ふと、涙が出た。
私はあの子に嫌われていなかった。
その喜びが形となって現れる。
良かった…良かった。
とても安心した。
━━━━━━━━━━━━━━━
これが俺の青春ってね!
夜中に散歩する。
これは日課だ。
人混みが嫌いな僕がちゃんと世界を見れる、
堂々と何も気にせず外を歩ける唯一の時間だから。
日光に当たらないのは心配されるが日の出の時に少し浴びてるからと言い訳をいつも繰り返している。
大抵、そういうことではないと怒られるか笑われるかの2択だ。
家の中で窓から浴びてるからいいじゃないか。
夜に見える星空。
これは田舎者の特権じゃないか。
オリオン座、おおいぬ座、こいぬ座、冬の大三角形。
とても綺麗だ。
冬の夜の冷たい空気もとても心地よい、
自動販売機で買うコーンスープの美味しさを引き立たせる。
歩みはどんどん上へと向かって登っていく。
馬鹿と煙は高いところが好きとか言うが、そうなのかもしれない。
登っている時の自分の口から出る白い息、星空、全てが一緒なのに飽きずに綺麗とワクワクする自分は馬鹿みたいな子供だ。
そして登り終えた時に見える日の出、そして家々の逆光に飽きずずっと見に来ている僕は本当に子供みたいだ。