落下中

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ある日いきなり「あなたのそういう所が嫌い」と友達に伝えられた。
「嫌い」それは私が初めて言われた言葉で、私が記憶している通りだと好きでは無いもの、嫌なものに言う言葉だ。
私はあの子に嫌われている…?
とりあえず その場では、「あはは…」など軽く笑った。
それを聞いていた他の2人がそれは言い過ぎなどと
言っているからあの言葉は冗談などでは無いのだろう、
彼女達があの子に注意してる。
その事実がこれは事実なのだと私に突きつける。
私の頭の中はずっとあの子の「嫌い」その一言で埋め尽くされていた。
私は嫌われている、中学生と言う子供から大人へ移り変わる言わば1番心が変わる時期に友達だと思っていた子に
発せられたその一言は私を落とすものには十分過ぎていた。
私は嫌われる存在、
今まで何も思っていなかった会話の中に私がどう思われているか、その情報を集めようと脳と五感が動く。
退屈そうではないか、私の話に心から笑ってくれているか、私の身だしなみに嫌われる部分はないか
匂いは?見た目は?仕草は?
そして、この不安を目の前の子に伝わらないように全力で笑う、微笑む、とにかく口角を上げる。
ずっと頭が動いて不安を取り除こうとするけど、逆にどんどん不安が膨らんでいく。
家に帰って脳に残るのはあの子の「嫌い」という発言。
どんどんあの子が憎らしく思えてくる。
いつもと変わらぬように話しかけてくるあの子が、
とても気に食わない。
どんどん 私から話しかける事はなくなって、
そして学校にも通わなくなった。
周りの人々が全員が私のことを嫌っているようにしか考えられない。
私の行動一つ一つが周りの人をイラつかせる原因にしか思えない。
私の見た目がとても醜いものにしか思えない。
私の全てがとても嫌いだ。

家に引きこもりになってしばらく学校から距離を置き
自分の事を嫌いには思わなくなった。
学校に行けるかと言われればNOだ。
あそこに行けば私はとても醜い、嫌われ者の化け物になってしまう。
親の提案で職員室まで行ってそのまま帰ると言う特殊な学校の行き方をする事となった。
ずっと家にいると体力が無くなるし、学校に少し顔を出せば出席も取れる
それならと行ったら親はとても喜んでくれた。
チャイムを聞くと逃げ出してしまうようになってしまったが…

そんなある日のこと、私が家でテレビを見ていると
とあるタレントが軽い雑談をしていてその内容が友人との付き合い方であった。
(○○さんは軽く俺それ嫌いとか言いますよね、あれなんでですか?)
(それはな、俺がそいつの事をもっと好きになりたいから。もっと好きになって長い間一緒に過ごしたいからそこは嫌いだとハッキリ言うんだ。それでもっと好きになる。)
初めて聞く考え方だった。
そっか、そう言う事だったんだ。
あの子の嫌いは私の思っていた嫌いじゃない。
私の傷つける痛々しい嫌いではなく、もっとふらっとした洗濯したてのタオルのような、
柔らかさと温かさを持っているのだ。
ふと、涙が出た。
私はあの子に嫌われていなかった。
その喜びが形となって現れる。
良かった…良かった。
とても安心した。



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これが俺の青春ってね!

1/25/2023, 7:06:58 PM