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8/18/2023, 11:20:14 AM

8/18 お題「鏡」

「鏡よ、鏡。教えておくれ。お前が好きなことはなぁに?」
『それは、あなた様とお話しをすることです』

「鏡よ、鏡。教えておくれ。お前の一番好きな人はだぁれ?」
『それは、あなた様です』

「鏡よ、鏡。教えておくれ。お前が嫉妬する相手はだぁれ?」
『それは、王子様です』

「白雪姫。また鏡と遊んでいるのかい?」
「あら、王子様」
「程々にしておくれ。国民に知れたら大変だ、僕と鏡が嫉妬し合っているなんて」
「大丈夫よ。この鏡は人をからかって遊んでいるだけだもの」

『そうでも、ないのですよ。私は真実を映す鏡ですから』

(所要時間:10分)

8/18/2023, 6:12:33 AM

8/17 お題「いつまでも捨てられないもの」

君がいつも捨てるもの
 半日置きっぱなしのカップのコーヒー
 冷蔵庫でしなびた小松菜
 ゴミの日に出し忘れた空き缶とペットボトル
 穴の空いた靴下
 掃除機のフィルターにぎっしり詰まったゴミ
 テーブルに置きっぱなしのレシートの束

君がいつまでも捨てられないもの
 僕との腐れ縁

(所要時間:4分)※構想除く

8/17/2023, 3:56:49 AM

8/16 お題「誇らしさ」

「また王子の護衛を放ったらかしていなくなっただと?」
 騎士団長が声を荒げる。
「まったく、素行の悪さといい貧民街への出入りといい騎士の風上にも置けん! あの男には誇りというものがないのか!」
「まあそう言うな」
 王子は笑う。
「あれですべきことはしているのだ」
「奴のすべき事は…」
「私の護衛以外にもある」

「あの、ありがとうございます。何とお礼を言っていいか…」
「あ? いや、いいよ。俺は俺のやるべきことをやっただけだから」
 膝についた土を払う。地面には悪漢が3人ごろりと転がってのびている。
「暗い道は気をつけなよ? って言っても悪いのは圧倒的にこいつらだけど」
「はい…。あの、」
「おにいちゃん、これ」
 小さな少女の方が、手のひらに乗る程度の人形を差し出す。
「おまもり、あげる。おれいに。ママがつくってくれた…」
「いいよ、持ってな。俺の代わりに守ってくれるようにおまじないしてやるから」
 ちょいちょいと指で触れると、少女はにっこりと笑った。
「ありがとう!」
 走っていく少女たちを見送る。そんな自分を、青年は少し誇らしく思う。

(所要時間:13分)

8/16/2023, 8:55:49 AM

8/15 お題「夜の海」

 何も、見えない。月も星もない。ただ波の音がするだけ。
 ふらり、ふらりと、女が歩く。裸足が砂を踏む。生ぬるい夜風が女のワンピースをなびかせる。
「帰って来て」
 ぼそりと、女は口を開いて言葉を落とした。
「帰ってきてよ」
 両足から力が抜け、がくりと膝をつく。腕は支えにならず、女は砂の上に突っ伏した。
「置いて行かないで…」
 何も、見えない。月も星もない。ただ波の音と、すすり泣く声がするだけ。

(所要時間:6分)

8/15/2023, 1:31:16 AM

8/13 お題「心の健康」

「心の健康を保つためにわが社全員心がけることー!」
「その1! 全員何があろうと定時で上がる!」
「その2! 同僚や上司の尻拭いを引き受けない!」
「その3! パワハラをする上司は殴り倒す!」
 朝の復唱を苦々しく見守るのは、異動してきた部長だった。
「…我々"上"への負担が大きすぎませんかねぇ?」
「構わんよ」
 こっそりと見回りにきた専務は悠然と構え、にやりと笑った。
「そもそもその一番"上"の決めたことだ」

(所要時間:11分)



8/14 お題「自転車に乗って」

 どこまでも走ろう。君となら行ける。
 登り坂はギアを切り替えて、下り坂は―――おっと、スピードを出しすぎないように気をつけて。
 君と風を切って、君と風になって、滑るように走る。時には野山を。時にはビルの谷間を。
 君の足が力強くペダルを踏む。そのたびに私は力強く前に進む。
 さあ、今日はどこへ行こうか、相棒。

(所要時間:8分)

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