8/16 お題「誇らしさ」
「また王子の護衛を放ったらかしていなくなっただと?」
騎士団長が声を荒げる。
「まったく、素行の悪さといい貧民街への出入りといい騎士の風上にも置けん! あの男には誇りというものがないのか!」
「まあそう言うな」
王子は笑う。
「あれですべきことはしているのだ」
「奴のすべき事は…」
「私の護衛以外にもある」
「あの、ありがとうございます。何とお礼を言っていいか…」
「あ? いや、いいよ。俺は俺のやるべきことをやっただけだから」
膝についた土を払う。地面には悪漢が3人ごろりと転がってのびている。
「暗い道は気をつけなよ? って言っても悪いのは圧倒的にこいつらだけど」
「はい…。あの、」
「おにいちゃん、これ」
小さな少女の方が、手のひらに乗る程度の人形を差し出す。
「おまもり、あげる。おれいに。ママがつくってくれた…」
「いいよ、持ってな。俺の代わりに守ってくれるようにおまじないしてやるから」
ちょいちょいと指で触れると、少女はにっこりと笑った。
「ありがとう!」
走っていく少女たちを見送る。そんな自分を、青年は少し誇らしく思う。
(所要時間:13分)
8/17/2023, 3:56:49 AM