6/22 お題「日常」
朝の日差しに伸びをして、寝ぼけ眼で朝ごはん。顔を洗って歯磨き後、スーツに着替えて―――ゴーグルをかける。
「よーし、それじゃ今日も行くかぁ」
「オッケイ!」
構えた銃を一度下げ、ジャコン、とリロードする。
「兄キ、今日は西の森の方でSOS出てるぜ」
「わかってる。母さんは無理すんなよ!」
「今さら何言ってんのさ。アタシはアンタたちの大先輩よ?」
「違いねーわ」
結界の張られた門を出れば、そこは戦場。特殊スーツに身を包み、魔物を倒して人々を救う。それが、俺たちの日常。
いつまで続くかわからない。少なくとも、俺が物心ついて以来、これが毎日の風景であることだけは確かだった。
(所要時間:9分)
6/21 お題「好きな色」
「そうだなぁ…。赤と青」
それから首を傾げて、兄は付け加えた。
「あと、緑かな」
「バラバラじゃん!」
小学生だった私は頬を膨らませた。兄の好きな色のクリアファイルをプレゼントしたかったのに。
「ひとつにしてよ。どれが一番なの?」
「なあ、ひかり」
病院のベッドで、兄は微笑む。優しくて賢い、憧れの兄のその微笑みが大好きだった。
「俺の好きな色、ちゃんと覚えてて。一生忘れるなよ?」
今ならわかる。R、G、Bの三原色。
その表すものは―――光。
(所要時間:10分)
6/20 お題「あなたがいたから」
閃光を寸での所でかわす。背後から爆音。振り返りもせず、巨大な斬馬刀を振りかぶって男に斬りかかる。男はそれを両手の刀で受け止めた。
至近距離での鍔迫り合い。触れ合い輝く刀身から、激しい火花が爆ぜる。
「アンタがいたから、アタシはここまでやって来れた」
男の落ちくぼんだ眼窩の奥は闇。声が届くとは思えない。だが、言わずにはいられなかった。
「ここからは、アタシがアンタを超えて行く。だから、」
ニッ、と笑う。
「見守っててくれよな。―――オヤジ」
常に共にあった頃の、父親譲りの不敵な笑みだ。
刀を押し切ろうと力を込める。目が灼けるほどに強まる光。まだ押す。まだ。
ひとたび力を抜き、横薙ぎに薙いだ斬馬刀は、かつての自分の世界を真っ二つに切り裂いた。
涙は出ない。新たな世界が待っているから。
(所要時間:15分)
6/19 お題「相合傘」
おや。こんな雨の日に、迷子ですか?
見たところお仕事帰りのようですが。
私ですか?
いいんですよ、雨は慣れてますから。
……いやいや、本当にいいんです。
じゃ、私はこれから夕飯を貰いに行くので。
…おや? 方向が同じですか?
では傘の御相伴に預かるとしますか。
たまには人間と並んで歩くのも悪くはないものですな。
「にゃーん」
(所要時間:6分)
6/18 お題「落下」
落ちる夢を時々見る。
操縦が上手く行かず、市街地の建物すれすれを飛び、最後には墜落する―――その瞬間目が覚める。
まさか、それが現実になるなんてな。
乱高下する機体を必死で維持する。後方から乗客たちの悲鳴が聞こえる。隣では副操縦士が蒼白な顔でスイッチを切り替えている。
正夢にするつもりはない。これは夢じゃない。夢じゃないなら、どうにかなるはずだ。
さあ、腕の見せ所だ。
(所要時間:7分)※構想除く