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6/20 お題「あなたがいたから」

 閃光を寸での所でかわす。背後から爆音。振り返りもせず、巨大な斬馬刀を振りかぶって男に斬りかかる。男はそれを両手の刀で受け止めた。
 至近距離での鍔迫り合い。触れ合い輝く刀身から、激しい火花が爆ぜる。
「アンタがいたから、アタシはここまでやって来れた」
 男の落ちくぼんだ眼窩の奥は闇。声が届くとは思えない。だが、言わずにはいられなかった。
「ここからは、アタシがアンタを超えて行く。だから、」
 ニッ、と笑う。
「見守っててくれよな。―――オヤジ」
 常に共にあった頃の、父親譲りの不敵な笑みだ。
 刀を押し切ろうと力を込める。目が灼けるほどに強まる光。まだ押す。まだ。
 ひとたび力を抜き、横薙ぎに薙いだ斬馬刀は、かつての自分の世界を真っ二つに切り裂いた。
 涙は出ない。新たな世界が待っているから。

(所要時間:15分)

6/20/2023, 12:25:04 PM