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6/12/2023, 11:39:51 AM

6/12 お題「好き嫌い」

「好き嫌い好き嫌い好き嫌い好き嫌い好き嫌い好き嫌い」
「速い速い速い」
 たんぽぽの花びらを高速でつまんでは投げているのは、幼なじみのモコ。やがて花びらを一気に根こそぎむしった。
「んんーーーーーーっ、好き!!!!!!」
「力強い」
「次っ!!」
「まだやんの?」
 この勢いだと土手のたんぽぽが絶滅しかねない。
「だって…」
「はいはい」
 一瞬で涙目になる特技もとっくに見慣れてる。あたしは軽くあしらった。
「まあいっか、気が済んだら教えて。本読んでるから」
「おっけー!」
 誰に恋してんだか知らないけど、まあ、そんなあんたもあたしは好きだよ。

(所要時間:11分)

6/11/2023, 10:22:45 AM

6/11 お題「街」

 雑踏。大小の話し声。自転車のベル。行き交う車。今日も街は人であふれている。
 ぼくは一人、その中に立っている。誰にも気づかれず、誰の邪魔にもならず、ただ立ち尽くしている。
 ぼくは希薄なるもの。この世界の"裏側"に棲むもの。

 ねえ。
 今こうしてぼくを見ている"きみ"は、ぼくに気づいているの?

(所要時間:7分)

6/10/2023, 11:46:07 AM

6/10 お題「やりたいこと」

 最初の進路相談が一応終わった。俺は廊下のスペースに立ち尽くし、大きな窓の向こうの夕焼けにさらされていた。
 やりたいことなんて何もない。夢とか希望とか一切ない。何なら生きてるのすら面倒だ。死んでいいならさっさと死にたい。
 やりたいことって、何なんだ? みんなそんなのあるのか? みんな口に出さないだけで、本当は死にたいんじゃないのか?
「じゃあさ」
 突然の声が俺をぎょっとさせた。見覚えのない女が隣で夕日を浴びていた。
「私のやりたかったこと、代わりにやってくれない? どう? いい?」
 そいつは悪びれずににこっと笑う。正直可愛い。だが。
「いいわけないだろ」
「たとえばキスとか」
「は?!」
「冗談。またね」
 そいつは手を振りながら角を曲がって走り去る。少しだけ追いかけて同じ角を曲がると、そこには誰もいなかった。


(所要時間:10分)※構想除く

6/9/2023, 11:19:12 AM

6/9 お題「朝日の温もり」

 小鳥の鳴き声が夢に射し込んできて、薄く目を開ける。レースのカーテンで柔らげられた朝日が、ベッドに光を積もらせている。
 ―――あったかいな。
 ―――でも、あなたの方が、あったかい。
 隣に手を伸ばす。その手は空を切って落ちた。ぼんやりと目を向けると、隣にいるはずの人がいない。
 まだ、夢を見てる。そう思った。だからそのまま眠りに落ちた。

「対象の様子は?」
「やはり、日が差してから一瞬だけ覚醒するようです。しかし…」
「すぐに意識レベルが落ちる、か。太陽光センサーの異常としか考えられないが…」
「ですが、何度確認しても異常はありません」
「…人間としての記憶が何らかの形で作用しているのか…」

 まだ、夢を見てる。あなたが隣りにいるのを確かめられるまで。


(所要時間:16分)

6/8/2023, 11:58:23 AM

6/8 お題「岐路」

「しまっ―――」
 あの時、右の道を行っていれば。崩れる橋から落下しながら僕は悔やんだ。悔やんでも仕方のない事だ。僕の命は終わる。
 目を開いた。僕は生きている。どういうわけか、あの分かれ道だ。
 助かった。もちろん僕は、さっき選ばなかった右の道を進んだ。
 これが正解だ。意気揚々と森を進む僕は、突然後ろから引き倒された。獣だ。そうわかった時には激痛が意識を奪った。
 目を開いた。僕は生きている。どういうわけか、あの分かれ道だ。
 僕は来た道を一目散に駆け戻った。走る。走る。僕が生き残る道はこれしかない。
 夜だ。疲れ果てた僕は、川のせせらぎを聞いた。水を飲もう。そう思って屈んだ瞬間、足を滑らせて転落した。川は思いのほか深く、すぐに飲まれて呼吸を失った。
 目を開いた。僕は生きている。どういうわけか、あの分かれ道だ。
 いや、道はない。体が震えた。僕の生き残る道など、ひとつもない。膝をついたまま、僕はもう、立ち上がれない―――

(所要時間:15分)

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