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12/20/2023, 7:48:01 AM

 寂しいはずなのに
 寂しくないって
 あなたはあからさまな嘘をつく。

 そんなに肩肘張らなくても、なんて
 言わなけりゃよかったのかなあ。


▶寂しさ #48

12/16/2023, 3:22:11 PM

 同居人が風邪を引いた。
 昨日から付きっきりで看ているけど一向に熱が下がらず、空咳も収まらない。
「だからさっさと髪を乾かせと言ったんだ」
「う、ごめんなさい……けほっ」
「……はあ。まあいいけど」
 昼からお医者さんに診てもらおうかと言えば、明らかにゲェという顔をする同居人。まったく、いくつになってもこの医者嫌いは治らないらしい。
「とりあえずお粥作ったけど、食欲はおありで?」
「ある! ちょーお腹空いた!」
「はいはい。じゃあ鍋持ってくるから、この手、離してくれない?」
 さっきから服の裾を握られていたのだが、動きづらくてちょっと邪魔、なんていうと泣き出しかねないので優しく言う。……優しいはずだ。
 その考慮が効いたのか、若干渋りながらもおとなしく手を離してくれたので、お粥の入った小鍋を取りにキッチンへ。それを、水を入れたコップと共にお盆にのせてから部屋に戻る。
 同居人は私を見るなり、目をキラキラさせてお盆に手を伸ばした。そんなにお腹が空いていたんだなあ。
 ベッド横に置いていた椅子に腰掛けて、小鍋の蓋をとる。途端、湯気と出汁の香りが立ち上った。
「はい、どうぞ。無理せず吐かない程度に食べるんだぞ~」
「はーい! いっただっきまーす!」
 同居人は、さっきまでの咳が嘘のようにパクパクとスプーンを進める。
 うーん、やはりこいつは実に美味しそうに食べる。作りがいがあるというものだ。

 その晩のリビングには、医者に処方されたほんのすこしのスパイスを必死に飲み下し、この世の終わりのような表情で口元を押さえる同居人の姿に、ぼくはすっかり笑い転げてしまった。


▶風邪 #47

12/2/2023, 3:01:00 AM

 手のひとつも握れやしない貴女との距離を
 これ以上詰められないのがもどかしい。


▶距離 #46

11/30/2023, 4:03:00 PM

 ごめんね、なんて言わないで。
 泣かないで、なんて言わないで。
 泣いてなくても「どうしたの」って声を掛けて欲しいだけなの。笑い掛けて欲しいだけなの。
 一時の慰めなんかじゃなくて、もっと私を見ていてほしいと。そう望むのはいけない事なのかな。


▶泣かないで #45

11/25/2023, 12:59:04 PM

「お天道さんの下で腹一杯飯が食いてーなぁ」
 そういって、あいつは灰になった。
 魔族の癖に太陽の下に出てくるからだ。オレなんか放っといて、そのまま影にいれば良かったのに。このくそヴァンパイアめ。
 死ぬ直前にもいっちょ前に格好つけやがってさ! 自分を傷付けるだけの存在になに〝さん〟なんて付けてるんだよ、このくそ野郎って言ってやれば良かったのに。
 そしたら……そしたらオレだって、太陽のこと、素直に憎めるのにさぁ。


▶太陽の下で #44

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