人生ゆたか

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8/16/2025, 4:54:55 AM


     13:13(ねぇ、今日の夜空いている? >


< ん?空いてるけど…)13:16

< どうした?)13:17


               13:17(えぇっと…>


< ?何かあったか?)13:18

< 嫌な事でもされた?)13:20



          13:20(違うよ!…あのね >

       13:23(今日の夜、お祭りがあるの>

      13:23(もし…嫌じゃなかったら >


< 行く! )13:25



「えっ……」
私は、《行く!》の文字を見て固まった。
ダメ元でLINEをしてみた相手は、片思い中の女の子
急なお誘いは、断られる事があるのを重々承知の上で
送ってみたのだ。
まさかの…OKで頭が混乱中。

「えっと…何か返さなくちゃ」
混乱気味の中、スマホ画面を触り始める私
頭は混乱しているのに、今の私の顔はニヤケ顔で
端から見たら気味悪がられるだろう。

しかし…《!マーク》とか…フフッ
まるで、私のお誘いを待っていました!と、ばかり
ではないか。
嬉しさが爆発しているかのような、この《!》
を付けられて送られてきた文は、私にとっては
何よりも嬉しいもの。



          13:38(楽しみにしているね >


<あぁ、また後で!)13:39

<迎えに行くから、家に居て)13:40



《《ガタンッ》》
最後に送られてきた文を読んで、
私は、動揺しすぎて今度はスマホを床に落としてしまった。

姉ちゃん?
2つ下の弟がスマホを落とした音に吃驚しながら
こちらを見つめていた。

ごめん。手が滑っちゃった…
アハハと、笑って誤魔化しながらも内心は気が気じゃないぐらい動揺(2回目)
迎えに来る…
少しでも長い時間を共に過ごせる。
そう考えながら、床に落としたスマホを拾う。
拾ったスマホを握りしめ、リビングから自室へと戻る中
頭の中では、大変!これは…お洒落しなきゃ!
で、いっぱいだ。



私にとって、《!》は
楽しみだと言う気持ちが爆発するマークだ。

さあ!今夜のお祭りが楽しみだ!!

8/15/2025, 6:19:08 AM

「兄さま!大きな虹が出ていますわ!」

その声に、幼かった頃の妹の姿が記憶に蘇る
その日も、突然吹いた強い風に深紅の長い髪が揺れた。
十数年前に病で此の世を去った母様の色と同じ
美しい色だった。髪を抑えこちらを向き、眩しい笑顔を向けてくる、髪と同じ色の真紅の瞳
その瞳の色は、私とは似ていない。
髪の色も似ていない。もちろん血も繋がっていない。

それでも、ただ1人の此の世で1番大事な家族で
私の愛する妹。
その美しい妹の姿を見たのは、当時彼女が10歳になった時の今日と同じ日だった。

それが私が見た最初で最後の記憶だ。




「兄さま!!」

私が返事をしなかったからか、
突然、私の右腕を引っ張る妹。その腕を引っ張った勢いが、あまりにも突然の事だったので少し体勢を崩し
蹌踉めく私

『おっ……と』

蹌踉めいた私を妹が自分の全身を使って受け止めた。

「っ!ごっ…ごめんなさい兄さま…
 …痛かったかしら…?」

『いや…大丈夫だよ。こちらこそ、ごめんね
 お話しなくて…少し考えごとをしていたのだよ。』

「……。」

私の身体を妹が抱きしめてきた。
十数年前の小さかった妹の身体は、今や立派な女性の身体付きへと変わっていた。それでも、私より小さい身体で、その小さな身体から、突然引っ張ってしまった罪悪感が伝わる。
体温と共に彼女身体は少し震えているのを感じた
泣きそうな声で、小さく
引っ張ってごめんなさい。って声が聴こえた。

私は、小さい彼女を抱きしめながら
大丈夫だよ。と、優しく応えた。
何度も…何度も…応え続けた。

『……それより、大きい虹の話をしておくれ
 どのくらいの大きさなんだい?』

何度も、謝り続ける彼女を少しでも元気にさせようと
虹の話を持ち出した。

「…兄さま…」

『兄さまよりも虹は大きいかい?』

「えぇ…兄さまよりも大きいわ…すごく大きい」

『じゃあ…庭の東屋よりも大きいかい?』

「えぇ…東屋よりも、このお城よりも大きいわ…」

『そうかい…そんなに大きいんだね…』

「…ルパンナの村から、大桟橋が有る村まで虹の橋が
 架かっているわ…この方角よ…」

妹は、私の身体を支えながら私の右手を優しく掴み
虹がどの方向に架かっているのか分かりやすく教えてくれるその声には、少し明るさが戻ったようだ。

その声を、聞いた私は妹に静かに語りかけた。
これから、旅立つ愛する妹へ贈る言葉だ。

『…リーチェ、私の分まで世界を見るんだ。
 悪い事も良い事も…時には辛い気持ちにもなるだろ
 う。だが…それらが今、現実に起きている事だ。
 決して、目を逸らしてはいけないよ。私の目は
 あの日の闘いで視えなくなった。私が視える世界は
 真っ暗な暗闇だけだ。この真っ暗な世界の生活にも
 ようやく慣れた。だが…一つだけ
 もしも、もう一度だけ数秒だけでも視えるように
 なったら…私は、お前の花嫁衣装姿を見てみたか
 った。血の繋がりが無いが、それでも…私の
 愛する妹の成長した姿を…』

……話しの途中で、妹は私を力強く抱き締めた。
今の彼女は、どんな顔をしているのだろうか…?
目の視えない私には表情が分からない。
だが、表情は分からなくても私を力強く抱き締める
彼女から全身から愛が伝わる。

「兄さまっ…」

『リーチェ、君が見ていく世界は私も見てみたかった
世界でもあるんだ。君が幸せにならないと私は哀しいな…それに、永遠の別れでは無いんだよ。何方かが生きている限り想っている限り記憶に残らないほど忘れない限りね。それを忘れてはいけないよ。』

「…はい…兄さまの分まで世界を見ます…っ」
 愛する私の兄さまの分まで…」

彼女は、涙声で尚且つ力強く応えた。
リーチェが、一呼吸置いて話を続けようとしたところで
私は、リーチェをすかさず抱きしめ低い声で告げた。

『………リーチェ…私の後ろへ下りなさい。
 ………其処に居るのは誰だい?
 目の視えない私だが、あいにく鼻と耳と感だけは
 鋭いものでね。さあ…応えてもらおうか?』

「……えっ…?」

妹との話しの途中で、誰かの気配を感じた私は
咄嗟に、妹に下がるように告げた。
いつもより声が低くなった私の声を聴いた妹は
振り向きもせずに、直ぐに私の後ろへと
早足で下がった足音が聴こえた。

足音が、私の背後で止まった。どうやら妹は
言われた通りに動いてくれたらしい。
実に賢い妹だ。

《っ!!おっ……お話中だった為、声をかけられなかっ
 たことをお許しください!
 我は、リーチェ・グロンズ様に新たに仕える護衛兵の
 アルバ・シャーネードと申します。本日より
 北東の国、ジャマルまでの護衛も任されました。
 それから、下の門の荷物馬車の者から伝達で
 出立の準備が整ったとの御報告を伝えに此方へ…》

声からして、怯えているのが分かる。だが…此方に
危害を向けようとはしていない…

『……ふむ…警戒させてしまって悪かったね、アルバ
 それから、リーチェどうやら時間切れのようだ』

警戒を解きいつもの優しい声になった私に妹は
私の背後から、今度は私の正面へと移動したみたいだ

「兄さま…」

彼女の掌が、私の顔に触れた。
優しくて暖かな体温だった。目は視えなくても彼女が
美しい女性になった事が分かる。
私の役目は、妹を護り立派な美しい女性へと育てる事だった。その役目は、次のリーチェを護る者へと受け継がれる。

『……リーチェの護衛兵アルバ・シャーネード』

《はっ…はい!》

『妹を死なせたらお前の首と心臓は私が貰う。
 哀しませる様な事をしたら命無いと思え。』

《御意!我、アルバ・シャーネードは
 リーチェ・グロンズ様の盾となり刃になり
 この身が滅びるまで御守りいたします!》

力強く答えた声は、迷いが無かった。
この人なら大丈夫だ。妹を護ってくれる
私は、こう確信できた。

『あぁ…妹をよろしく頼む。
 どうか、世界の全てをを共に見て…
 そして生きてくれ。私の願いは…それだけだ。
 さあ…リーチェも行きなさい。振り返らず
 真っ直ぐ前を向いて…』

私は、手探りで彼女の顔を見つけ頬に触れると
彼女の頬は、涙で濡れていた。
彼女は、涙声で兄さまの妹で良かった。
と、呟いた。
私も、お前の兄で良かった。
と、応えると私に触れていた手を優しく外してあげた。







何処へでも行きなさい。
恐れずに振り返らずに、私はお前の幸せを願うよ
私が見れなかった世界をお前が変わりに見ていくんだ
君が見ていく世界が幸せな世界でありますように…

遠ざかって行く荷物馬車の走り去る音を聴きながら
愛する妹と若き護衛兵は、この国から北東の国へと旅立った。
その日も、大きな虹が架かる日だった。

8/12/2025, 1:36:39 PM

2025/08/12

今日の天気は快晴で、尚且つ地球温暖化の影響からか
陽射しが数年前より強く肌が焼けるようだ。
その内、地球上の人間や植物や動物が
皆丸焦げになるのでは無いのか?とも、思えて来る。
少しでも、涼しくなるように皆
日傘や扇子や帽子、手の平サイズの小型の扇風機
を片手に額には汗をかきながら足早に木陰へと向かう。
そして、今日も何処かで救急車のサイレンが鳴る。

(あぁ…また、今日も何処かで誰かが熱中症になって
しまったのだろうか?)

私は、こんな事を考えながら少しでも早く木陰に入ろうと足早になる。

(あと、数メートルで木陰だ…。そしたら何処かの
喫茶店へ入り冷房の効いた店内でアイス珈琲を飲もう)

アイス珈琲…と、いう名前だけで私の心はウキウキと
心が躍った。それはまるで、小さい子供が夏祭りに連れて行ってもらう時のウキウキとした感情に似ていた。
その感情を持ったまま木陰に入った私は、
手に持っていた日傘を綴じ喫茶店を探し始めた。
木陰には、強い陽射しの中を歩くのを諦めた人々で溢れていた。皆、考えている事は同じだ。

木陰に集まる人々を横目に見ながら、私の頭の中は
アイス珈琲が飲みたい!…で、いっぱいだった。


それを思いつくまでは……。


(あっ……。アイス珈琲とバニラアイスを頼むのも
良いなぁ…そうすれば、アイスフロート出来るよな…
もう…想像しただけで、美味しそう…。
いや……美味しいに決まっている!

さて…アイス珈琲だけにしようか…
バニラアイスをデザートに付けようか…)

新たに思いついた❝バニラアイス❞…と、云う名前にも
心が揺れ動き始めてしまったら、もう止まらない。


「うーん……」

悩んでいる事数十分…未だに宛もなくフラフラと歩いていたが…ふと、何気なく視界に入った
❝とある看板❞の前で歩くのを辞めた。



 『おかえりなさい。

 珈琲片手にMasterと❝真夏の記憶❞を
 もう一度、思い出してはみませんか? 』



「なんだコレ…?」

私は、つい声に出してしまった。
なんて名前の喫茶店(?)だ?
私は、扉の方に顔を向けたが何も書いていない。
普通の何処にも有るようなお洒落な作りの扉と
これまたお洒落な作りの傘立てが置いてあるだけ。
外観は…レンガ調の造り。
店内は…窓硝子から店内を覗いてみたが
淡いオレンジ色の灯りが優しく店内を照らしていた。

うん…嫌いでは無い。どちらかと言うと、むしろ好みだ

お店の名前が不明で、少し怪しい雰囲気の喫茶店(?)
だが、この看板の文章に心を惹かれている私。
ただ単に、好奇心と興味本位が勝っている。
怖さ半分…気になる半分…
入るか…
入らないか…

未だ看板の前で立ち止まる私。
不思議な事に、先程まで人々の間を割って歩いてきたのに、此処に辿り着いたら人1人誰も居ない。
いつの間にか、人が集まっていた場から外れていた様だ。ジッと動かずに立ち止まっていると
私の額と背中から汗が幾つも流れ落ちていくのを感じる。

「…よしっ…決めた」

私は、看板の前から店内へと続く扉の前へと移動する
階段を3段ぐらい上りお洒落な作りの扉の前に着き
ビンテージ調の作りで出来たドアノブに手をかける
外気温が高いおかげで、ドアノブも程よい温かさが
握りしめた指や掌の肌から、その熱が伝わる。
緊張しているせいか、心臓もバクバクと力強く脈を打ち
体中の血液が全身へと駆け巡りドアノブを握りしめた
手にも力が入る。

1つ、深く深呼吸をする。落ち着け…落ち着け私。
と、自分に言い聞かせる為だ。
2つめの息を深く吸い込んだところで、私は…
意を決し扉を開いたのだ。

《カランカラン…》

扉を静かに開けると、チャペルの鐘の音みたいな
もしくは、熊よけの鈴のような音が店内と私の耳に届いた。

【おかえりなさいませ】

声のする方へ顔を向けると、少し背の低い漢が珈琲カップを片手に持ちながら私の方を見つめていた。

【ようこそ、語られぬ喫茶店へ
 私は、Master。
 貴方の真夏の記憶をお聞かせ願います。】


「…こんにちは、Masterさん
 私の真夏の思い出をお話いたします。ですが…
 その前に、アイス珈琲は作ってもらえますか?
 あと…バニラアイスとか…あったりしますか…?」


【かしこまりました。お嬢様
 では、こちらの席へ…直ぐにアイス珈琲と
 Master自慢の手作りバニラアイスを
 ご用意いたします。】


Masterは、手に持っていたカップを片付けながら
アイス珈琲用のグラスを用意していた。
私は、手際の良さが良いMasterさんだな…
と、感心しつつ案内された席へと足を進めた。
ようやく空調の効いた涼しい店内で、アイス珈琲とバニラアイスが食べられる事に感謝をしながら
私は、真夏の記憶を思い出していた。











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今日の天気は快晴
貴方もアイス珈琲とバニラアイスを注文しながら
空調が効いた涼しい店内で、ゆっくり一息入れてみたら如何だろうか?

語られぬ喫茶店のMasterは、何時でも貴方の
帰りをお待ちしております。 

             語られぬ喫茶店 Master


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