人生ゆたか

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2025/08/12

今日の天気は快晴で、尚且つ地球温暖化の影響からか
陽射しが数年前より強く肌が焼けるようだ。
その内、地球上の人間や植物や動物が
皆丸焦げになるのでは無いのか?とも、思えて来る。
少しでも、涼しくなるように皆
日傘や扇子や帽子、手の平サイズの小型の扇風機
を片手に額には汗をかきながら足早に木陰へと向かう。
そして、今日も何処かで救急車のサイレンが鳴る。

(あぁ…また、今日も何処かで誰かが熱中症になって
しまったのだろうか?)

私は、こんな事を考えながら少しでも早く木陰に入ろうと足早になる。

(あと、数メートルで木陰だ…。そしたら何処かの
喫茶店へ入り冷房の効いた店内でアイス珈琲を飲もう)

アイス珈琲…と、いう名前だけで私の心はウキウキと
心が躍った。それはまるで、小さい子供が夏祭りに連れて行ってもらう時のウキウキとした感情に似ていた。
その感情を持ったまま木陰に入った私は、
手に持っていた日傘を綴じ喫茶店を探し始めた。
木陰には、強い陽射しの中を歩くのを諦めた人々で溢れていた。皆、考えている事は同じだ。

木陰に集まる人々を横目に見ながら、私の頭の中は
アイス珈琲が飲みたい!…で、いっぱいだった。


それを思いつくまでは……。


(あっ……。アイス珈琲とバニラアイスを頼むのも
良いなぁ…そうすれば、アイスフロート出来るよな…
もう…想像しただけで、美味しそう…。
いや……美味しいに決まっている!

さて…アイス珈琲だけにしようか…
バニラアイスをデザートに付けようか…)

新たに思いついた❝バニラアイス❞…と、云う名前にも
心が揺れ動き始めてしまったら、もう止まらない。


「うーん……」

悩んでいる事数十分…未だに宛もなくフラフラと歩いていたが…ふと、何気なく視界に入った
❝とある看板❞の前で歩くのを辞めた。



 『おかえりなさい。

 珈琲片手にMasterと❝真夏の記憶❞を
 もう一度、思い出してはみませんか? 』



「なんだコレ…?」

私は、つい声に出してしまった。
なんて名前の喫茶店(?)だ?
私は、扉の方に顔を向けたが何も書いていない。
普通の何処にも有るようなお洒落な作りの扉と
これまたお洒落な作りの傘立てが置いてあるだけ。
外観は…レンガ調の造り。
店内は…窓硝子から店内を覗いてみたが
淡いオレンジ色の灯りが優しく店内を照らしていた。

うん…嫌いでは無い。どちらかと言うと、むしろ好みだ

お店の名前が不明で、少し怪しい雰囲気の喫茶店(?)
だが、この看板の文章に心を惹かれている私。
ただ単に、好奇心と興味本位が勝っている。
怖さ半分…気になる半分…
入るか…
入らないか…

未だ看板の前で立ち止まる私。
不思議な事に、先程まで人々の間を割って歩いてきたのに、此処に辿り着いたら人1人誰も居ない。
いつの間にか、人が集まっていた場から外れていた様だ。ジッと動かずに立ち止まっていると
私の額と背中から汗が幾つも流れ落ちていくのを感じる。

「…よしっ…決めた」

私は、看板の前から店内へと続く扉の前へと移動する
階段を3段ぐらい上りお洒落な作りの扉の前に着き
ビンテージ調の作りで出来たドアノブに手をかける
外気温が高いおかげで、ドアノブも程よい温かさが
握りしめた指や掌の肌から、その熱が伝わる。
緊張しているせいか、心臓もバクバクと力強く脈を打ち
体中の血液が全身へと駆け巡りドアノブを握りしめた
手にも力が入る。

1つ、深く深呼吸をする。落ち着け…落ち着け私。
と、自分に言い聞かせる為だ。
2つめの息を深く吸い込んだところで、私は…
意を決し扉を開いたのだ。

《カランカラン…》

扉を静かに開けると、チャペルの鐘の音みたいな
もしくは、熊よけの鈴のような音が店内と私の耳に届いた。

【おかえりなさいませ】

声のする方へ顔を向けると、少し背の低い漢が珈琲カップを片手に持ちながら私の方を見つめていた。

【ようこそ、語られぬ喫茶店へ
 私は、Master。
 貴方の真夏の記憶をお聞かせ願います。】


「…こんにちは、Masterさん
 私の真夏の思い出をお話いたします。ですが…
 その前に、アイス珈琲は作ってもらえますか?
 あと…バニラアイスとか…あったりしますか…?」


【かしこまりました。お嬢様
 では、こちらの席へ…直ぐにアイス珈琲と
 Master自慢の手作りバニラアイスを
 ご用意いたします。】


Masterは、手に持っていたカップを片付けながら
アイス珈琲用のグラスを用意していた。
私は、手際の良さが良いMasterさんだな…
と、感心しつつ案内された席へと足を進めた。
ようやく空調の効いた涼しい店内で、アイス珈琲とバニラアイスが食べられる事に感謝をしながら
私は、真夏の記憶を思い出していた。











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今日の天気は快晴
貴方もアイス珈琲とバニラアイスを注文しながら
空調が効いた涼しい店内で、ゆっくり一息入れてみたら如何だろうか?

語られぬ喫茶店のMasterは、何時でも貴方の
帰りをお待ちしております。 

             語られぬ喫茶店 Master


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8/12/2025, 1:36:39 PM