風花

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7/18/2023, 3:05:25 AM

『母の手』

それは暖かかった。
がさがさとしていて、
指はあかぎれだらけだった。
それでも母の手は暖かかった。
大きな母の手に小さな僕の手が包まれたとき。
それが僕の幸せな記憶。
遠い日の記憶。

それは冷たかった。
しわしわになっていて、
固くなった皮膚。
骨の形がよくわかる、
生気の無い母の手。
いつの間にか母より大きくなった僕の手で、
母の手を握ったとき
ふと遠い日の記憶が頭を掠めた。

6/18/2023, 8:35:24 AM

『未来哲学』

まだ来ぬ時を嘆くものがいる
現状から予想し得ることは
どれも不幸なことばかりだからだ

まだ来ぬ時を心待ちにしているものがいる
現状から予想し得ることは
どれも今とは違う世界が広がっていると
信じているからだ

まだ来ぬ時というものは
全て人間の産み出した世界である
十年後の未来はどうしてるかなんて
想像でしかみることはできず
実際に十年経ったら、未来ではなく今になるのだ

その想像の世界が人を生かしも殺しもする
人間が産み出したはずなのに
人間は未来という概念が操るカラクリ人形となる

未来のために努力したり
未来を嘆いて死んだり
未来に喜んだり
未来を恐れたり

まだ来てさえいないのに
人は未来に振り回されて生きている









6/17/2023, 2:43:42 AM

『解圧』

大好きな雨が嫌いになった
低気圧が頭を締め付けて、制服を濡らしていった

晴れた日も嫌いになった
暑さが私にのし掛かり体力を削っていった

部活が嫌いになった
部長という重圧から解放されて何故か寂しかった

勉強が嫌いになった
頭が悪い私は受験の重圧に耐えられなかった

大人が嫌いになった
私に期待してくる度涙が溢れた

自分が嫌いになった
なにも努力できない自分が情けなかった

いつしか圧ばかりの月日は流れ
世界は明るくなった

雨がまた好きになった
晴れの日が許せるようになった
サークルが気に入った
勉強が楽しくなった
大人といると面白くなった
自分を少し肯定できた

一年前よりも笑えるようになった


6/14/2023, 1:14:36 PM

『空の概念』

昼と夜との境界線
夜と朝との境界線
時が経っても空の境界線は曖昧で
時の狭間に吸い込まれそうになる

空と大地との境界線
宇宙と空との境界線
どこまでいっても空の境界線は曖昧で
空という概念に吸い込まれそうになる

境界線がないのに確実に空は存在していて
いったいどこからが空なのだろうか
地面から離れたときから空なのだろうか

空という存在は曖昧さ故、概念へと成った
空は遠い昔から存在する不変の概念か?
毎日姿を変えて存在する空は一体何者なのだろうか


僕は空という存在がちょっぴり不気味に思う

6/11/2023, 10:29:31 AM

『愛のかたち』

美しい山々が広がっている
四季毎に衣装替えする
大きな山々が広がっている
僕らはこの山を愛している

歪な山々が広がっている
木々を切られて裸にされた
地表剥き出しの山々が広がっている
僕らはこの山を愛していた

新しい家々が広がっている
暖かい家の光を纏っている
山の名残か坂道が広がっている
僕らはこの町を愛している

綺麗なビル達が広がっている
お洒落なネオンの光を着ている
遊びに困らない楽しい店達が広がっている
僕らはこの街を愛している

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