『母の手』それは暖かかった。がさがさとしていて、指はあかぎれだらけだった。それでも母の手は暖かかった。大きな母の手に小さな僕の手が包まれたとき。それが僕の幸せな記憶。遠い日の記憶。それは冷たかった。しわしわになっていて、固くなった皮膚。骨の形がよくわかる、生気の無い母の手。いつの間にか母より大きくなった僕の手で、母の手を握ったときふと遠い日の記憶が頭を掠めた。
7/18/2023, 3:05:25 AM