風花

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9/29/2025, 3:46:42 AM

「捨てた」

今日、私は捨てました。
小学生の頃に描いた絵も、

今日、私は捨てました。
中学生の頃の成績表も、

今日、私は捨てました。
高校生の頃の卒アルも、

今日、私は捨てました。
大学生の頃の恋人との写真も、

今日、私は捨てました。
会社員の頃の名刺も、

今日、私は捨てました。
全部全部捨てました。

自分の過去を捨てました。


永遠なんてないけれど
そんな言葉を聞くけれど
本当に本当に、
自分の過去がなくなったことにはならないけど



これで
私の過去を記すものは永遠になくなってしまったのです。

9/17/2025, 5:05:57 PM

『真っ黒な靴紐』

足が重くなって
ふと足元をみると真っ黒な靴紐が
僕の足をぐるぐるまきにしていた。

生まれてきてからずっと歩き続ける中で、
知らない間に靴紐は黒く染まって僕に絡まって
歩けなくしていた。

真っ黒な靴紐は
やがて僕の足から上に上に絡まっていって
僕を蝕んでいった。

ハサミを出して
真っ黒な靴紐を切ろうと思ったけど
靴紐からは赤色の液体が滲むだけだった。


靴紐は切れなかった。
靴紐は悲鳴をあげていた。
靴紐は泣いていた。
靴紐は、靴紐は、靴紐は……、 

…僕とずっと一緒だった。


ああ、そうか。


僕は
丁寧に靴紐をほどいて結びなおして
また歩き出す。

また絡まってほどけても
結びなおして歩き出す。

真っ黒な靴紐は僕を苦しめるけど
靴紐がなければ歩けなくなる。

絶対に断ち切れない黒いものがあるから今の僕がいる。


だから
僕は心の傷と一緒に歩いていくしかないんだ。



2/16/2025, 4:50:46 PM

『月日』

絵が上手だねって褒められた
かけっこで一番になった
テストで百点を取った
僕は凄いやつなんだと思った
このまま凄い大人になれると思った
はやく大人になりたかった

自分より絵が上手い人がいた
かけっこで世界を目指す奴がいた
テストで満点なんて取れなくなった


自分より上が沢山いた。


もしもこのまま大人になったら、
僕の優れてるところなんて
何一つ無くなってしまう。


だから時間よ、

止まれ。止まれ。止まれ。


これ以上失わないように。

止まれ。止まれ。止まれ。

6/14/2024, 3:09:32 PM

『時はピンクと青の狭間』


よくわからないの
貴方の言っている言葉

一緒に過ごした日々が全て嘘で
貴方が本当に愛していたのは私じゃなくて…

どうしてと訊いても
曖昧な台詞が吐き出されるだけ

私そんな
空っぽの言葉を聞きたかったわけじゃないわ

ピンクと青の混ざった
夕の空

その下に黒のシルエット
私と彼

夕焼けチャイムにかき消されて
貴方の声がよく聞こえないの

だから別れようだなんて私の聞き間違え
そう思いたかった

6/11/2024, 1:18:37 PM

『街が消えた日』

どかーん、と
爆発一つ、二つ、三つ…

真っ暗闇の空から光の雨が降り注ぐ
それが家や地面にぶつかって

どかーん、と
爆発一つ、二つ、三つ…

昨日まで確かにあった
僕の家も
学校も
人も
街も

ぜんぶ、ぜんぶ

どかーん、と
爆発一つ、二つ、三つ

簡単に吹き飛んで消えていった
僕らの3月10日東京

失われた日常
僕らの3月9日東京




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