風花

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1/20/2023, 12:42:16 PM

『母』 

音を立てて
綺麗な青に吸い込まれた

クラリクラリ 
光が揺れて
コポリコポリ
泡が産まれた 

無限の色が踊っている
母なる海に吸い込まれた

巨大な青は
冷たくて恐ろしい

だけどそれは
この世の全ての母と同じ

いつも水仕事で冷えた手で
抱きしめてくれた母と同じ
進むべき道を誤ったら
叱ってくれる母と同じ

冷たくて恐ろしくて何もかもを包んでくれる

だから寂しくない。

真っ暗な海の底で
己の体が朽ちようとも
母さんのもとに還れるのだから。

僕は懐かしい夢ををみながら
どこまでも沈んでゆく。








1/13/2023, 2:20:43 PM

『夢をみてたい』

優しい夢をみてたい
子供の頃の。
暖かな母に似た
そんな優しい夢をみてたい

明るい夢をみてたい
希望に満ち溢れて。
どこまでも翔べる
そんな明るい夢をみてたい

楽しい夢をみてたい
手を取り合って。
みんなが笑える
そんな楽しい夢をみてたい

現実はそれとは少し離れてしまったけれど
夢をみるときは誰もが自由だから。

私はそんな夢をみてたい。


12/18/2022, 1:16:59 PM

『幸福の夜』

寒い部屋
孤独の夜
毛布に包まる

暗い部屋
静かな夜
今夜もあいつがやってくる

音もなく
鋭く光る眼を持つ獣が
頭をカリカリ爪で掻く

仕方なく
毛布を開けてそいつを入れれば
ゴロゴロと喉を鳴らす

勝手に人の腕に
脚を乗せ
ふみふみしながら爪を立ててくる

少し痛いけどこれが僕の幸福な夜

冬の夜
愛しい獣が
ぬくもりを求めてやってくる

いつもご飯ばかりねだる獣は
夜にだけ
暖かな毛玉になる

寝る前に
「おやすみ」といえば
「にゃおん」と返す

そして次の日には
またご飯をねだってくるのだろう




12/16/2022, 11:52:34 AM

『迷惑な演奏会』


始まりはピアノでカプリチョーソ
コホンと喉が鳴る
自由なリズムで喉を鳴らす

鼻から水が垂れてきて
ズズッと吸えば少し汚いカバサの音

寒気が走って
カチカチなる歯はアッチェレランド

そのうち咳はアジタート

ヒリヒリ痛い喉からは
鼻の詰まった間抜けな歌声

盛り上がる演奏にくるくる目眩
それに加えて体が熱る

風邪引きの演奏会は
まだまだ続きそうである






12/15/2022, 12:58:09 PM

『冬の待人』


白くなった窓ガラスに人差し指を一本

軽く押し当てて優しく引く

一本の指の軌跡は

少しだけ向こう側を見せてくれる


空は冬の分厚い雲を纏って

白を落とすか迷っている


そのうちツンとした冬の空気が

部屋の暖かな空気とぶつかって

小さな軌跡をまた曇らせていく


だけどこっそりと窓の雫が静かに落ちて

向こう側の続きを見させてくれた


そこからそっと覗き込んで待ち続ける、

空の白を待ち続ける、


私はそんな冬の待人。






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