『夢をみてたい』
優しい夢をみてたい
子供の頃の。
暖かな母に似た
そんな優しい夢をみてたい
明るい夢をみてたい
希望に満ち溢れて。
どこまでも翔べる
そんな明るい夢をみてたい
楽しい夢をみてたい
手を取り合って。
みんなが笑える
そんな楽しい夢をみてたい
現実はそれとは少し離れてしまったけれど
夢をみるときは誰もが自由だから。
私はそんな夢をみてたい。
『幸福の夜』
寒い部屋
孤独の夜
毛布に包まる
暗い部屋
静かな夜
今夜もあいつがやってくる
音もなく
鋭く光る眼を持つ獣が
頭をカリカリ爪で掻く
仕方なく
毛布を開けてそいつを入れれば
ゴロゴロと喉を鳴らす
勝手に人の腕に
脚を乗せ
ふみふみしながら爪を立ててくる
少し痛いけどこれが僕の幸福な夜
冬の夜
愛しい獣が
ぬくもりを求めてやってくる
いつもご飯ばかりねだる獣は
夜にだけ
暖かな毛玉になる
寝る前に
「おやすみ」といえば
「にゃおん」と返す
そして次の日には
またご飯をねだってくるのだろう
『迷惑な演奏会』
始まりはピアノでカプリチョーソ
コホンと喉が鳴る
自由なリズムで喉を鳴らす
鼻から水が垂れてきて
ズズッと吸えば少し汚いカバサの音
寒気が走って
カチカチなる歯はアッチェレランド
そのうち咳はアジタート
ヒリヒリ痛い喉からは
鼻の詰まった間抜けな歌声
盛り上がる演奏にくるくる目眩
それに加えて体が熱る
風邪引きの演奏会は
まだまだ続きそうである
『冬の待人』
白くなった窓ガラスに人差し指を一本
軽く押し当てて優しく引く
一本の指の軌跡は
少しだけ向こう側を見せてくれる
空は冬の分厚い雲を纏って
白を落とすか迷っている
そのうちツンとした冬の空気が
部屋の暖かな空気とぶつかって
小さな軌跡をまた曇らせていく
だけどこっそりと窓の雫が静かに落ちて
向こう側の続きを見させてくれた
そこからそっと覗き込んで待ち続ける、
空の白を待ち続ける、
私はそんな冬の待人。
『心反転模様』
「気づいてほしい」に蓋をして
今日も上手に何でもないフリ
「助けて欲しい」を飲み込んで
明日も上手に何でもないフリ
うっかりボロがでちゃっても
「何でもない」と言っちゃうの。
「どうしたの?」と訊かれれば
「ホントはこうなの」と言いたいの
「 」なんにも訊かれなかったら
「はやく気づいてよ」って心が叫ぶ
私の心は穴だらけ
ホントを言ったら治るのに
自分から突き刺して黒に染めてく
私の心
白と黒との斑点模様
嘘ばかりの反転模様