久しぶりに秘密の箱を開けてみた。
私の捨てられない物ボックス。
昔集めてたパワーストーン、海外でもらったレシート、部活のみんなでつけたミサンガ、使い切った交換日記などなど
ここに物を溜めるのは私が小学生の頃からの癖で、
かれこれ15年ほどの思い出ゴミがこの両手で抱える段ボールの中に詰まっている。
その中で1番嵩張るのがこのノート。
「空の観察日記」計5冊。
小学2年生から6年生までの4年間に及ぶ超大作だ。
当時、私にしか見えない月があったことを鮮明に覚えている。
それは決まって新月の夜にだけ、月が出ないはずの空に赤い、少しいつもより大きいまんまるな月が浮かぶのだ。そして不規則な時間でふっと消える。
それを母に言っても父に言っても分かってくれない。
指差して何度見せても「そんなものは見えない」としか言わないので、私はこの月を私にしか見えない特別な物だとあえて他人に内緒にするようになった。
この「空の観察日記」は主に月の様子を書き留めた物だ。
誰にも見せたことは無い。
この日記が6年生で終わっているのは、ある日突然赤い月が見えなくなってしまったからだ。
22歳の現在まで、一度も。
あの月が良い物なのか悪い物なのかは分からないけど、あの頃の私を夢中にしたそれに、もう一度会いたいと思う。
【20代女性の独白】
確か8月の最後の木曜日だったかな。
何日か残業が続いててね、
その日も結局終電1本前に駆け込んだな。
確か...23時40分発。
車内は結構ガラガラだった。
疲れてたから、本もスマホも見ずに窓の外をぼーっと眺めてたんだよね。
ずっと海沿いを走ってる路線だから、真っ暗な夜の海と空が延々続くだけなんだけど。
でも月明かりで波が動いてるのは見えた。
やけに明るい月だったんだよね、その日は。
ちょっと大きくて赤みがかかった色だった。
でも普段月なんか注意して見ないから、そんなもんかと特に気にして無かったんだけど...
最寄り駅直前で、反対方向の列車が間を通ったから、5秒くらい窓から海が見えなくなった。
で、すれ違った後、月が無くなってたんだ。
急に海が真っ暗になった。
さっきまでと明らかに景色が違うから驚いちゃって。
後から調べたらその日、新月だったんだよね。
でも確かに、赤くて明るい月が海を照らしてるのを15分くらいずっと見てたんだよ。
なんだったんだろ、あれ。
【40代男性の証言】
純粋に人に優しくできなくなっている
周りからからどう思われるか、今後も仲良くしてて損のない相手か、自分へのリターンはあるか...
いつから私はこんな考え方をするようになったのか
どんな結果になろうと、すべては自分の小さな決断の積み重ねであると思う。
それが悪い結果になったとき、自分が間違った決断をしたと後悔したくないから「初めから決まっていた」と思いたくなるのだろう。
全ては必然なんてことはあるはずがない。
ああ、今日も朝が来てしまった。
遮光カーテンを開けると、嫌味なくらい眩しい太陽が私を照りつけるのだろう。
そうするとベッドから起き上がらずを得ないし、顔を洗って着替えなければならない。
パンを焼いて口に突っ込み、家を出て鍵を閉めバス停まで早歩きをさせられ、そしてまた仕事が始まるのだ。
何が嫌ってわけじゃない。
ただ、同じことの繰り返しにうんざりしていただけ。
例えば明日、目が覚めても太陽が昇っていなかったら
そんなことが実際に起こると地球の大惨事な訳だけど。
でもカーテンを開けても起き上がらなくてもいいし、顔を洗って着替えなくても良い。
朝ごはんにはパンじゃなくて優雅にホットケーキなんか焼いちゃって、1日中家から出ずに過ごすのだ。
太陽さんよ、1日くらい休んでみたら?