久しぶりに秘密の箱を開けてみた。
私の捨てられない物ボックス。
昔集めてたパワーストーン、海外でもらったレシート、部活のみんなでつけたミサンガ、使い切った交換日記などなど
ここに物を溜めるのは私が小学生の頃からの癖で、
かれこれ15年ほどの思い出ゴミがこの両手で抱える段ボールの中に詰まっている。
その中で1番嵩張るのがこのノート。
「空の観察日記」計5冊。
小学2年生から6年生までの4年間に及ぶ超大作だ。
当時、私にしか見えない月があったことを鮮明に覚えている。
それは決まって新月の夜にだけ、月が出ないはずの空に赤い、少しいつもより大きいまんまるな月が浮かぶのだ。そして不規則な時間でふっと消える。
それを母に言っても父に言っても分かってくれない。
指差して何度見せても「そんなものは見えない」としか言わないので、私はこの月を私にしか見えない特別な物だとあえて他人に内緒にするようになった。
この「空の観察日記」は主に月の様子を書き留めた物だ。
誰にも見せたことは無い。
この日記が6年生で終わっているのは、ある日突然赤い月が見えなくなってしまったからだ。
22歳の現在まで、一度も。
あの月が良い物なのか悪い物なのかは分からないけど、あの頃の私を夢中にしたそれに、もう一度会いたいと思う。
【20代女性の独白】
8/17/2023, 3:01:14 PM