つまらないことでも
例えば、それが他人から見てつまらないことでも、
あなたとのかけがえのない経験は、私の中では大切な宝物だ。
病室
海が好き。
小さな頃から。
学生時代は彼にねだって、よく海に連れて行ってもらった。
逢えなくて淋しい時も、海を眺めた。
海が見える式場で愛を誓った。
海好きな私に彼がマリンウェディングを提案してくれたのが、嬉しかった。
その後、仕事や家庭でバタバタした生活を送りながらも、休みの日には家族で海に行った。
息子と娘も海が好きになった。
夫が頑張って別荘をプレゼントしてくれた。
学生の頃に『将来は海の近くに住みたい』と言ったことを覚えていてくれた。
いい人生だったと思う。
病室の窓からは海が見える。
青く広がる空と海。ネモフィラが咲き乱れ、幻想的な光景だ。
どうせなら海が見えるところでと、夫がその病院を探してくれた。
今日はうだるような暑さになるだろう。
初めて恋をしたあの暑い日のことを思い出しながら。
あなたと一緒に歩いた海辺の思い出も。
明日、もし晴れたら
明日、もし晴れたら君と一緒に遊園地にでも出かけよう。
明日、もし雨なら君と一緒に自宅で映画でも観よう。
晴れでも、曇りでも、雨でも、どんな天気でも、
君と一緒にいるのは楽しい。
君に会えることが嬉しい。
そう、会うたびに君に何度でも恋をする。
だから、一人でいたい。
大切な人が私の目の前から、いなくなったあの日。
枯れ果てた泉のように、一滴も涙は出なかった。
悲しいとか、苦しいとか、そういう感情が無かった。
いや、あったのかもしれないけれど、
後から思えばそれは自己を防衛するために、
固く扉を閉めていたのかもしれない。
埋葬されても何も感じることが出来なかった。
それから一年。
この日は命日だ。
父が大好きな花を買っていった。
小さい頃から、私によく薔薇をくれた。
正直言うと、私が薔薇を好きだったから、
父が買ってきてくれたのかもしれない。
お墓に添えるには違う花がいいのかもしれないけれど、
でも薔薇が良かった。
今日は学校をお休みした。
今日だけは父のことだけを考えたかった。
だから、一人でいたかった。
教会に行ってお祈りをした。
父の大事にしていた日記を見つけたので読んだ。
私のことがたくさん書いてあった。
書かれている文字のインクが涙で滲む。
ようやく泣けた気がする。
澄んだ瞳
君のその澄んだ瞳に写る僕。
君から見て僕はどう写っているのだろうか。
君の気持ちを聞かせて欲しい。