REINA

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5/29/2024, 12:24:38 PM

「ごめんね」



正直、分かっていたことじゃないか。
それでも、こんな僕でも、勇気を出して告白したんだ。
伝えたかった想いを言葉にできた。
かなり震えていたし、どもっていたけれど。
それでも、後悔はしていない。
涙は溢れてくるけれど。

『ごめんね』

そう言われた。
その後も何か言われた気はするけれど、
頭が追いつかなかった。

いや、理解したく無かっただけかもしれない。
幼馴染みだったから、少しは脈があるかな…なんて、
思い上がりもいいところだ。



5/28/2024, 12:13:17 PM

半袖



衣替えの季節になった。
雨が振っている日は長袖の人がいるものの、
暑い日はやはり半袖の人が多い。



図書館にて。

少し背伸びをして取ろうとした本は、
誰かの手にすっぽりとおさまった。

横目に入った腕の筋肉で男性だと分かった。

目を向けると、学校一の秀才と呼ばれる彼が、
微笑みながら「どうぞ」と渡してきた。

やっぱり男の子なんだなと思った。

憧れの人から手渡された本をギュッと抱きしめた。

5/27/2024, 12:41:41 PM

天国と地獄


今日のあいつは機嫌がいいらしく、朝から陽気に鼻歌なんか歌ってやがる。
これなら、オレのおねだりにも期待が持てるかもしれん。
だが油断は禁物だ。
場合によっては機嫌が悪くなる可能性だって秘めているからだ。

オレがあいつに要求することだと?

『お小遣いを増えたらいいなぁ』とか、
『もう少し料理のレパートリー増えたらいいなぁ』とか、まぁ、そんな些細な願い事もあるが、
今日オレが要求したいことはそんなことではない。
しかし言い方次第では地獄を見ることになる。

新婚ではあるが、長年付き合ってきて、
お互いにケンカっ早い性格なところもあるせいか、
だいたいの地雷は分かる。

だが押せば意外と弱いところもあるやつだから、
これは押すしかない!

「朝風呂、一緒に入ろう!」
















まだまだ恥ずかしがり屋なあいつには、
無理難題な要求だったようだ。

ビンタを食らった頬を撫でながらも、
いつかは恥じらう姿を見せてくれるだろうと妄想するのも楽しいものだ。





5/26/2024, 11:43:49 AM

月に願いを


『月が綺麗ですね』

有名な夏目漱石の本に出てくる言葉で、
『あなたが好きです』
という意味らしい。

なんてロマンチックだろうと思うのと同時に、
それで相手には想いがいかほどに伝わるのだろうかとも思う。

読書好きの彼になら、そう言えば伝わるのかしら。

秀才な彼のことだ、夏目漱石の本などは読破しているに違いない。

でもその前に、こんな夜が遅い時間に一緒にいることの口実を作る方も大変な感じがする。

月の光は煌々とベランダに降り注いでいる。
夜風が気持ちよかった。

あの人も同じように見上げていてくれますように。

5/25/2024, 12:49:23 PM

降り止まない雨


『…ごめん。君のことは嫌いじゃないけど、異性としては見られない…』

そう、雨が降る日に振られた。



朝のニュースでは傘が必要だと言っていた。
学校に置き傘があると思っていたら、誰かに盗られたのか、傘は無かった。

雨が止むまで待つかとも考えた。
時間を潰せるとしたら、図書室かと浮かんだが、
私を振った相手がいるかもしれない。

読書好きの彼のことだ。
自分からわざわざ会いに行くことはしない。
しょうがないと思い、教室へと向かった。


随分とまぁ、どしゃ降りな雨だった。
さすがの振られた日は、ここまでひどくは無かったが、
私の心模様を写しているかのようだった。

まだチクチクと心に痛みがある。
随分と過去のことなのに、雨が降るたびに思い出してしまう。

なんて、センチメンタルな気持ちに浸れば、
悲劇のヒロインぶれたものだ。
それで自分を慰めた。

階段を登ったところで、まさかの人物に出くわした。

「あ…」

と相手は一言何かを言いかけたが、

「さようなら」

と冷たい雨を浴びせるかのように言い放った。

振った彼が悪いわけではないのに、私は誰かのせいにする他無かった。
こんな女だから振られるのだ。

いや、彼があまりにも優しいからなのか、私を心配する様子が、より一層私を惨めにした。
だから嫌な女になって、さっさと嫌われてしまおう。
そして私も忘れよう。

背中に彼の視線が突き刺さる。
窓には大粒の雫がダラダラと打ち付けて流れていた。

雨は当分、止みそうにない。



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