REINA

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5/26/2024, 11:43:49 AM

月に願いを


『月が綺麗ですね』

有名な夏目漱石の本に出てくる言葉で、
『あなたが好きです』
という意味らしい。

なんてロマンチックだろうと思うのと同時に、
それで相手には想いがいかほどに伝わるのだろうかとも思う。

読書好きの彼になら、そう言えば伝わるのかしら。

秀才な彼のことだ、夏目漱石の本などは読破しているに違いない。

でもその前に、こんな夜が遅い時間に一緒にいることの口実を作る方も大変な感じがする。

月の光は煌々とベランダに降り注いでいる。
夜風が気持ちよかった。

あの人も同じように見上げていてくれますように。

5/25/2024, 12:49:23 PM

降り止まない雨


『…ごめん。君のことは嫌いじゃないけど、異性としては見られない…』

そう、雨が降る日に振られた。



朝のニュースでは傘が必要だと言っていた。
学校に置き傘があると思っていたら、誰かに盗られたのか、傘は無かった。

雨が止むまで待つかとも考えた。
時間を潰せるとしたら、図書室かと浮かんだが、
私を振った相手がいるかもしれない。

読書好きの彼のことだ。
自分からわざわざ会いに行くことはしない。
しょうがないと思い、教室へと向かった。


随分とまぁ、どしゃ降りな雨だった。
さすがの振られた日は、ここまでひどくは無かったが、
私の心模様を写しているかのようだった。

まだチクチクと心に痛みがある。
随分と過去のことなのに、雨が降るたびに思い出してしまう。

なんて、センチメンタルな気持ちに浸れば、
悲劇のヒロインぶれたものだ。
それで自分を慰めた。

階段を登ったところで、まさかの人物に出くわした。

「あ…」

と相手は一言何かを言いかけたが、

「さようなら」

と冷たい雨を浴びせるかのように言い放った。

振った彼が悪いわけではないのに、私は誰かのせいにする他無かった。
こんな女だから振られるのだ。

いや、彼があまりにも優しいからなのか、私を心配する様子が、より一層私を惨めにした。
だから嫌な女になって、さっさと嫌われてしまおう。
そして私も忘れよう。

背中に彼の視線が突き刺さる。
窓には大粒の雫がダラダラと打ち付けて流れていた。

雨は当分、止みそうにない。



5/24/2024, 1:09:15 PM

あの頃の私へ


あの頃の私は、好きな人に振り向いてもらいたくて、
すごく頑張っていたね。

メイクも可愛くして、あの人の好きなことを調べて、
頭がいい人だったから、一生懸命に勉強もした。

あの人の隣に立てるようにと頑張った。


一度は告白して振られたこともあったけど、
何度でもチャレンジした。

もしかしたら呆れられていたかも。



あれから数年。

お互いに社会人になって、職場が一緒になって、
再会できたことに運命を感じた。

それから少しずつ距離が縮まり、
手を繋いたり、キスをしたり、
一緒に朝日を眺めたり。


今、ようやく本当の意味で隣に立てる。
白いドレスを身に纏い、これからも隣に立って歩んでいくんだと。


あの頃の私へ。
大丈夫。
ずっと2人並んで歩いていくから。

5/23/2024, 1:04:49 PM

逃れられない



この恋からは逃れられない。
こんなにも人を好きになったのは初めてで。

こんなにも深みにはまるとは思っていなかったんだ。

彼女の視線から、彼女の想いから、
彼女の温もりから、彼女の優しさから、
逃れられないし、逃れたくもない。

5/22/2024, 12:08:45 PM

また明日



声をかけるまでにはまだ勇気が足りない。
だから心の中でそっと呟く。

『また明日』

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