耳を澄ますと
『好きです』
ふと耳を澄ますと聞こえてくる告白の声。
今は動くべき時じゃないというのと、
一部の好奇心で、その場にとどまる。
どうせ相手の答えは『…ごめん』だ。
『…ごめん』
ほらな。
『今は、勉強に集中したくて』
秀才くんが答えるいつもの模範回答だ。
オレの幼馴染みはどうやら恋人を作る気はないようだ。
もう少し遊び心を持ってもいいと思うのだが。
『勉強の邪魔にはならないようにするから』
女も意外と粘る。
だが男にとっては、しつこいのは逆効果だ。
しかして優しいあいつは困り顔をしているだろう。
後でからかう材料にでもしようと、
もう少しだけ寝転んで耳を澄ませた。
二人だけの秘密
二人だけの秘密の場所。
それは近くにある森の中の泉。
幽霊が出るとか、
呪われた泉とか、
いわくつきのような泉だったからこそ、
大人は誰も近づかなかった。
だから私たちはこっそり遊んだ。
泉からこんこんと湧き出る水は、
とても澄んでいて、確かに何かに引き込まれそうな感じだ。
私たちはその泉を覗き込む。
するととても綺麗な大人の女性と、
端正な顔立ちの大人の男性が写っていた。
そういえば、おばあちゃんから『未来が見えるかも』と言われていたっけ。
何年後かの私たちがそこにいて、
にっこりと笑っていた。
そう、これは二人だけの秘密。
優しくしないで
期待してしまうの。
優しくされると。
もちろん分かっている。
あなたの性格だもの。
誰にでも優しいのは。
だからこれは『特別な』優しさなんかじゃない。
でも、やっぱり期待してしまうの。
あなたの優しさに溺れてしまいたくなるの。
抗う術なんてない。
抗いたくもない。
私だけの『特別な』優しさを頂戴。
他の人には、どうか優しくしないで。
カラフル
人を好きになると、
こんなにも世界がカラフルに見えるものなのね。
楽園
天使というものが空想上の生き物だから、
実際にどういうものなのかは分からないのに、
まるで天使のような微笑み、
まるで天使のような声、
まるで天使のような無垢な瞳、
と形容してもいいような、そんな女性に出会った。
これではまるで一目惚れ。
いや、そうなんだろう。
気付けば目でその子を追っている。
まるで楽園の中で一際輝く華が、そこにはあった。