冬華(トウカ)

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8/12/2025, 11:23:26 PM

蝉たちが騒々しく叫ぶ
水分を含んだ空気が肌を撫でる
灼熱のアスファルトは足元から身体を焦がしていき
強い日差しが頭を焼く

汗で濡れた身体でお互いに寄り添って、暑い身体を近づけて、汗の香りと、ふんわり香る君の匂いを感じる

僕も君も暑いはずなのに、離れたくなくて、ずっと隣にいたくて、そしてなにより、その時間が一番幸せだった
汗で気持ち悪くても、暑さで倒れそうでも、君に寄り添いたかった


それが、あの真夏の、君との日常の記憶
他にいろんなこともしたけど、結局それが、一番幸せだったんだと思う

8/9/2025, 12:59:24 AM

君を見つけたこと
君に見つけられたこと
君と出会えたこと
君と仲良くなれたこと
君と喧嘩できたこと
君を好きになれたこと
君に好かれたこと
君と抱き合えたこと
君と手を繋げたこと
君をもっと深く知れたこと

全部、夢じゃないって、言ってほしい

もう目の前に君がいない今は、夢だったって言ってほしい
今すぐ目の前に現れて、無邪気な笑顔で笑いながら頭を撫でてほしい


今も私は、夢のなかから覚めてないよ

8/5/2025, 2:37:22 AM

人はよく、「夏がやってきた」とか、「冬の足音が聞こえる」とか、言ってる。

でも、季節は、やって来るものなのかな。
僕たちが、向かっていくものだったりして。
時が過ぎるんじゃなくて、僕たちが時に出逢いに行ってたりして。

そんなことを考えてたら、もう夏だ。
とても暑い日々に、僕らが足を踏み込み始めた。

ただいま、夏。

8/3/2025, 11:41:13 PM

寡黙な人だった。
自分から話すことはなく、僕から話しかけても、相槌を打つだけ。
何も言わないから、冷たい人だと思われてたけど、誰よりも努力家で、誰よりも熱意を持っている人だった。
そんな君は、きっと嫌になったんだね。
君ができる人になれたのは、血を吐くほどの努力を積み重ねたから。
でも、誰もそれを認めない。
天才だ、元々のスペックが高い、当たり前。
その期待に、応えることが辛かったんだね。
僕の言葉が届かないくらいに、苦しかったんだね。

目の前の四角い石を眺める。
ここへ来る時に買った炭酸を飲む。
ぬるくなった炭酸には、もう炭酸なんてなくて、蓋を開ける時に何も言わなかった。

7/28/2025, 11:47:34 PM

虹の始まりには、死者たちが集うらしい。
虹の橋が、天へと続く橋として向こう岸へ渡る前に、自分の後悔を悔やんだり、最後にこの世界を見たり、満足そうに座って待っていたり。
魂それぞれが、それぞれの最後の時間を過ごす。

大切なあの人は、ベッドの上で、あれがしたかった、これがしたかった、まだ死にたくないな、と、後悔を口にしながら、それでも幸せそうな顔で行ってしまった。
あの人は、後悔があるのだろうか。
それとも、この生に、満足したのだろうか。
僕との生活は、どうだったのだろうか。

今すぐ会って、話したい。
虹を探して空を見上げても、そこにあるのは、ギラギラと照りつける太陽だけで、虹なんてあるはずもなかった。

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