雨上がり
君との恋は、波瀾万丈の日々だった
お嬢様気質の君と、気弱な僕は、一応相性が良かった
してもらいたい君と、君の思うことをしたい僕
僕らの性格は、一応噛み合ってはいたんだ
でも、君といない時に、疲れてる自分がいたんだ
なんだか疲れたなって、その疲れの原因が何かは、考えなかった、いや、考えようとしなかった
君との日々は、いつも嵐だった
強風に振り回されて、大雨に押し返されて
正直に言うと、大変だった
君と別れた時、悲しかったけれど、僕の日常に、晴れが訪れた
風も吹かず、雨も降っていない
雲の切れ間から陽が差し込んだ
湿度が高い、雨上がりだ
人生勝ち組とか、人生の敗北者とか
世間では言われたりするらしい
いい大学を出たとか、年収がいくら超えてるとか、有名企業に就職してますとか、テレビで話題の俳優ですとか
まぁ確かに、生きていくことにはお金が必要だし、就職することにも学歴は必要だし
確かにそれらがあれば、生きていくことが楽にはなるかもしれない
でも、勝ち負けとか、誰と競ってるんだろうなって思う
別に、自分の人生がそれで幸せなら、それでいいと思う
その幸せは、自分自身の努力があってのものだから、そこまで頑張ってきたんだよっていうなら、拍手と称賛を送りたい
でも、それで勝ちだとか、人に対して負けだよとか言っていても、何を言ってるんだろうなって思う
貧しくても、豊かでも、幸せならそれでいいじゃないか
人とか関係ないよ
それぞれが、それぞれの幸せを願って、進んでいこうよ
テストでいい点を取れなきゃ、この世の終わりかと思ってしまうし
資格試験に落ちたら、親から人生終わりかって思うくらいに言われるし
勉強しなきゃ死んでしまうのではないかと思うくらい言われるし
人間関係でうまくやれなきゃ、生きていけないって言われるし
辛いし苦しいし大変だし死にそうだし生きていけられそうにもないし
でも、いくら失敗しようと、怒られようとも、命と、生きる意志を失わない限り、僕らの物語は、いやでも進んでいくらしい
君と付き合っていた時、なんだかふわふわしてるなぁと思っていた
好きっていう言葉は、綿飴みたいに軽い感じがして
愛してるって言葉は、雪みたいに冷たくて軽い
でも、君といる時の僕の心は、春みたいな温もりがあって、あまり気にしていなかった
でも、そういうことだったんだね
君は、今までも、これからも、渡り鳥みたいに
いろんな人に春を運んで、別の人へと去って行くんだ
だから、全部が軽かったんだ
ふわりと、軽く飛べるように
僕に対しての心残りがなくなるように
僕の元を去っていく君の顔は、まるで何も感じていなかったな
前を走る君の髪は、ふわふわと浮き上がり
眩しいくらいの日差しで、きらきらとかがやき
君の香りが僕鼻腔をくすぐる
しっとりしてそうな君の髪が、あまりにも魅力的すぎて、ふっと手を伸ばして触れてみた
すぐに気づいた君は、勢いよく振り返り、驚いた顔をして、その後恥ずかしそうにそっぽを向いた
しっとりしてそうな君の髪は、絹のように、さらさらしていた