君がくれた、毛糸で編まれた手ぶくろ。あとで調べてみたけど、どこにも売ってないし、タグもなかった。君は言ってくれなかったけど、君が編んでくれたんだね。ありがとう。
そんな手ぶくろも、もう長年使ってきて、私の手に合わなくなっちゃったよ。もう、はめられないや。
私の手にしっくりくる手ぶくろは、今はまだ見つかってない。君がくれた手ぶくろだけだ。
私が君の手ぶくろをもらうのは、いつになるんだろう。でも、すでにわかっているのは、私の命の鼓動がある間には、会えないということ。
「手が…冷たいよ…」
私の心に空いている穴を通り抜ける、冷たい風が、私の無防備な手と、私の体と心を、冷やして行った。
この世に、変わらないものはない。それは、この世界ができた時から決められていた、定義である。
人への気持ちも、冷めていくか、柔らかくなっていくか、変わっていく。
形あるものだって、いつか壊れる。
若い時の筋肉も、肌も、時間が経つごとに弱くなっていく。
その定義を決めたと考えられる、世界の創造主の神は変わらないのか?
そんなこともない。時間が過ぎれば、考え方だって変わってくる。定義を決めた神だって、変わっていくのである。
この世に、変わらないものはない。それは、この世界に存在するあらゆるものに対して決められた、定義である。
すでに決まっていること、揺るがない定義だから、変わることを恐れずに、今日も僕は変わっていく。
明日の変わった自分に憧れて、変わっていく。
君も、僕も。今変わる。
なんか小説っぽくなってしまいました。時間がある人や、興味のある人、ぜひ読んでください。
クリスマスの過ごし方
今朝、我が家のポストに入っていた説明書だ。
「クリスマスの過ごし方 説明書」
馬鹿馬鹿しい。なんなんだこれは。俺のクリスマスは、今年も残業して、1人で風呂に入って寝るだけだ。
馬鹿にしにきているのだろうか。朝からイラつかせてくれるぜ。
そう思いながら、1ページ目を開く。今朝は早く起きたため、出勤まで時間がある。ゆっくり読めるだろう。
「これは、あなたのためだけに作られた、あなただけの説明書です。恰幅のいいおじさんが届けた、人生で最初で最後のサービスです。大切に読みましょう。」
マジで馬鹿にしてるのか。新手のイタズラか?
「①あなたが勤めている会社を辞めましょう。」
…は?何を言ってる?
「②①終了後、隣町のショッピングモールに行ってください。」
「③そこで、ナンパされている人(以後A)を助けてあげてください。」
「④Aを助けると、食事の誘いがやってきます。その子の言うとおりにしましょう。」
「⑤レストランを出た後、Aと歩いていると、困っているお爺さんがいます。助けてください。」
「この5ステップを踏むと、あなたに人生最大のプレゼントが贈られます。では、聖なる日をお楽しみください。」
マジで何を言っている?正気なのか?そう疑う気持ちと裏腹に、本当な気がする。俺の人生を変える気がする。そう感じる俺がいる。
そして気づくと、俺は会社に電話をかけていた……
……あーあ、本当にやめてしまった。大丈夫か?
えーと、次はショッピングモールか。遠いなぁ…そう思いながら、俺は出かける準備をして、明るくなった外に一歩踏み出した。
やってきた。懐かしのショッピングモール。いつぶりだろうか。まるで初めて都会の景色を見る田舎者のようにきょろきょろしていると、壁際で女性が3人の男性に囲まれているのを見つけた。
あれを助けるのか?大丈夫かな?俺が怪我しない?そう躊躇っていると、勝手に足が動き出した。そして、
「やめろ」
俺もびっくりするほど、冷たく、低い声が出た。俺は元々身長も高く、180は超えている。そのおかげもあってか、ナンパをしていた男たちは、俺を見るなり、すぐに逃げ出した。
骨のない奴らめ。そんなならナンパとかすんなよ。
「あの…」
突然、砂糖のように甘く、音が高い鈴のような、綺麗な音が、俺の耳に入った。横を見ると、先ほどの女性が、おずおずと言った様子で、こちらを見ている。
俺は、その音に戸惑って、また、彼女の美しさも相まって、動くことができなかった。
「た…助けてくださって、ありがとう、ございました」
そうお礼を言われて、金縛りがやっと解けた。
「あ、あぁ!大丈夫ですよ!こ、困ってたみたいだったので、助けたまでです。で、では私は、これで」
そう言って立ち去ろうとしたが、「あの!」という声に呼び止められた。
「お礼、させていただけませんか?」
「あ」
そこで、俺は説明書を思い出した。
この誘いに従う、だったよな…。
そして、俺と彼女(この後、鈴晴[すずは]さんという名前を知った。)は、このショッピングモールにあるレストランで食事をとるのだった。
…正直にいうと鈴晴さんとの相性はバッチリだった。
年齢もほぼ同じ、趣味も同じで音楽。好きなもの、嫌いなもの。ほぼほぼあってる。
マジで好きになりそう…なんて考えて、会計を済ませて(俺が8割払った)外に出た。
そして、一緒に歩いていると、何やら困った顔をしてうろうろしているお爺さんがいた。
次は、おじいさんを助ける。だよな。
「おじいさん、なんかしたか?」
極力優しい声でそう声をかけると、
「あ、あぁ、実は、財布を落としてしまって…」
マジで大変なことだ。それはほんとにまずい。
「大変じゃないですか!一緒に探しますよ!」
そういうと、鈴晴さんも
「そうですよ!放っておけません!」
といって、3人で探し回った。すると、近くの公園の草むらに落ちているところを発見して、すごく感謝された。
「あぁ、ありがとう。本当に助かったよ。またお礼がしたいのだが、今はあいにく時間がなくてね。私の電話番号を渡しておくから、時間があるときに連絡してくれ。」
そう言って、名刺を渡してさっさと行ってしまった。
「よかったですね、おじいさん。」
「そうですね、本当に良かった。」
名刺を見るのは家でもいいか、そう思い、ポケットに突っ込んだ後、鈴晴さんと微笑み合いながら、その日はお開きとなった。
…あぁ、今日は色々あった。でも、いい出会いがあったし、また今度一緒に出かける約束もある。いい日だった。
そういえば、まだ名刺を見ていない、そう思って取り出してみると、そこには
「株式会社 秋夜カンパニー 社長」
と書いてあった。
…え?マジで?どうなんのこれ。
この男がこの先どうなるのか。それは、降り始めた雪のように、どこに行くのかも、どう進むのかも、わからない。
これは、クリスマスが送った、あるプレゼントを受け取った、1人の男の話。
イブの夜
今日は、クリスマスイブでした。
「今夜は彼女とクリパやねん」
「今夜は友達とイルミネーション行くんや」
みーんな、自分の楽しそうな予定をみんなに言いふらしている。
そんな中僕は、何にも話すことがない。
友達とどこかに行くわけでもないし、彼女がいるわけでもない。俗にいう、クリぼっちってやつかな。
そのことを馬鹿にするやつだっているし、同情してくるやつだっている。
そんな奴が嫌いだと思いながら、僕は笑っている。
「俺は今年のイブの夜も、クリぼっちだぜ!」
僕のいるグループに、見下すような笑いが巻き起こった。
今回は短めに。あなたに言葉の贈り物を
嫌なことも、辛いこともある毎日。そんな中で必死にもがいて、必死に生きていてくれている。そんな君へ。
今日も生きていてくれて、ありがとう。どうか明日も、必死に生きてください。