約11年前の今日、帰り際にある子から不思議なことを言われた。
「もし、よければ約束をしてくれませんか?」
「約束??」
「11年後の明日に、この手紙をシンデレラの姿をした子供に渡してください。」
そう言って、彼女は手紙を渡してきたのだ。唐突に起こったことだったので、私はよく分からずに受け取ってしまった。
そして明日、遂に彼女の言った11年後の明日になるのだ。
冗談だったのか、何か理由があるのか、私には分からないがそれは明日分かることだろう……。
次の日、私は道端でシンデレラと出会った。
「あれ、あれから一年たつのにまだここに居たんだね」
「そうなの、ここがお気に入りよ」
少女に話しかけた魚は、尾鰭を動かしあるものを渡した。
「最近はキラキラ光る物が沈んでいてね、これはその中でも良く光っていたんだ」
それは本当に光っており、海底でも自ら光っている。
「これは何かしらね」
少女は手にとって観察した。
「良くわからないけれど、これどうするの?」
「僕は持っていても、尾鰭で引っ張っていくぐらいさ必要ない、君はいるかい?」
「そうねぇ一応貰っておくわ」
少女は尾鰭を動かし奥に有る箱にしまった。
「それじゃ、僕は行くよ」
「ええ、」
「幸せとは何だろうか」
ぽつりと電車の隣の座に座った人が言った。
そのまま窓の結露と一緒に流れてしまうのかと思った時、
「私の幸せは雨に濡れる事ですよ」
と、何処からか声がした。
俺と隣の人は少し驚いて、その声の主を見つけた。
「いやー仕事場の屋上で雨の中、濡れた時が有りましてねぇ」
その人は俺達から見て斜め前、右の座席に座っていた。
「はぁ、屋上で」
「ええ、仕事で嫌なことが有ったんですが、そのまま屋上にいたら通り雨か土砂降りになりまして」
「へぇー、風邪引かなかったんですか?」
「案の定引きましたね……」
ははっと少し笑った後、彼は次の駅で降りていった。
「雨に濡れるかぁいやぁ、なかなか見ない人でしたね……」
俺は隣にいるはずの男性に向けて言った。
だが、隣には誰もいなかった。
雪が降っている。
視界は遮断され、君がどこにいるかも分からない。
少し歩いてはまた振り返り、一度走ってみたら雪が邪魔をする。
僕を雪の中に閉じ込めようとする雪原から抜け出し、もう一度君に会いたいと願いながらまた歩き出す。
いつしか、歩いている目的さえも思い出せなくなったら、君に会えるだろうか。
一変しない視界が、僕に諦めを提案してくる。
そして、僕の足取りが途絶えた。
「プレゼントを下さい」
私は言った。
「いいだろう、プレゼントをやろう」
そう、不可思議な者は言い、私にプレゼントをくれた。
そのプレゼント袋を開けると何も入っていなかった、だがプレゼントは貰ったので私は満足した。
綺麗な袋だった。