時間よ止まれ
あれほんとに止まっちゃったな。
午後4時42分を指したまま動かなくなった
時計の針を見て少年は焦る。
さてどうしようか、少年は考える
ここは少年の教室、放課後だから誰もいない。
少年と1人の少女を除いて。
どうやら今から帰るようだった少女は、
カバンを両手に持ち今にも立ち上がりそうである。
さて、問題は少年がこの少女に好意を寄せているということ。
もし好きな子と2人きりの時に偶然時が止まったとしたら、
人間は一体どんなことをするだろうか。
人に言えないようなムフフなことをするか、
否。この少年は超絶ビビりである故、
そのような事をする勇気などない。
しかしこれは一世一代のチャンス。
これを逃せば少女に触れることは二度と無い絶対に無い。
意を決して少女に手を伸ばす。
絹のような黒髪に手が届きそうになる。
綺麗だ、不覚にも少年は思う。
だが遂に少年が少女に触れることは無かった。
少年は伸ばしていた手を戻して、
まだ動かない少女を残し教室から出ていった。
その後少女との関係が特段変わることは無かった。
当然だ元々あまり話したこともない。
それでも少年はただ恋をしていた。
夜景
夜の風景ってキラキラしてる。
夜更かしに一々わくわくするほど子供ではないが、
これから先、決して飽きることは無いだろう。
ベランダで煙草を吸いながらそんなことを考える。
けれど、大人になりきれない僕には、
肺に入ってくる煙が重くていっつもむせる。
まだ短くない煙草を灰皿に押し付けながら
遠いビル群の煌々とした光をぼーっと眺める。
こうして夜景を見ていると落ち着くと共に、
なにかこう、よく分からない形容し難い感情を抱く。
僕はもういい歳をした「大人」というものだと思うけど
この気持ちの名前をまだ知らない。
だけど、僕はいつも思う。
このまま夜にいれたらな。
なんだか今日はやけに煙が目にしみるなぁ。
殆ど泣きそうになりながら僕は思った。
半年ぶりの散歩
高架下に漂う煙と煙草の匂い
あいつから貰うセッタ
ライターはガス切れ
仕方なく口元から奪う火種
クラクラする14ミリのタール
少し肌寒い帰り道
拭えない喪失感
とほんの少しの寂寞
夏が終わる
開けないLINE
僕は弱いからいっつも逃げてばっかで
なんにも知りたくないから
君の最後の言葉からも逃げて
そうやってずっとずっと逃げて
この先も一生開くことの出来ない君のLINE
それなのにもう届かない君からのメッセージを
僕は何故か待ってる
お願いです何も告げないでください。
これ以上踏み込まないから、 何も聞かないから、
傍に居させてください。