空蝉

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あれ、驚いたな。
君が来るなんていつぶりだろう。
なんて考えていると君は待ちきれなかったのか
早く開けろと言わんばかりに扉をドンドン叩き始めた。
近所迷惑になりそうなので急いで扉を開けに行く。

「急だね。まぁいつものことだけど。」
「私が来ないと、寂しくて死んじゃうでしょ。」
「――あはは、そうだね。寂し死ぬとこだった。」

核心を突かれて一瞬ドキッとしたが笑って誤魔化す。
大丈夫だ、ちゃんと冗談ぽく笑えてる、はず。
自分の顔なんて見えないのだから分かるはずもないが。

彼女はこうして気まぐれに僕の部屋を訪れては
映画やアニメを見て帰っていく。

映画が始まりタオルケットに包まりながら視聴する。
よくある展開の恋愛映画だ。つまらない。

彼女の反応を見てみようと横を見る。
彼女は、――寝てしまったみたいだ。
随分経ったとはいえ前に1度告白した男の前で寝るよう
な無防備すぎる彼女が心配になると共に、彼女に異性と
して見られる事は一生無いんだと、今一度痛感する。

映画が終わり、彼女を起こす。
2人でお菓子を食べて、色々喋る。幸せな時間。
そして彼女は帰る。
「また来るね。」なんて言って。
でも僕にはわかる彼女が暫く来ないことが。
彼女は気まぐれだから僕の心をかき乱すだけかき乱して
僕の気持ちには答えてくれない。

今日も彼女が帰ったあとで深くため息をつく。
もう帰ってしまった。という気持ちと、
もう来なければいいのに。という気持ちが混在して
自分でもよく分からなくなる。

それでも数ヶ月経ち僕の頭から彼女が薄れ始めた頃、
またやってくる。「よっ、」なんて言って。

「急だね、いつもの事だけど。」
「そろそろ寂し死ぬとこかと思って。」

「―あはは、ほんとだよ。超寂しかったんだから。」




突然の君の訪問。


8/28/2024, 4:28:13 PM