時雨 天

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9/24/2023, 10:52:52 AM

形の無いもの




手を伸ばして、何かを掴む。しかし、掴んだ手を開いてみても何も無い。
もう一度同じように掴んでみたが、結果は同じだった。
空気を掴もうとしても、掴むことはできない。形がありそうで、ないモノ。
どんなに頑張っても掴めない。形の無いものは、掴むことができない。
空気にするりと交わされている気分。

「こっちだよー」

そんな声が聞こえた気がして、掴もうとするが、またダメだ。

「つかまえることができないね、残念だー」

完全にからかわれている。少しムッとしたが、掴むことができないのならば、諦めるしか無い。

「また遊んでね」

そう耳元で言われた。
やれやれと肩をすくめて、また相手してあげようと心の中で誓う。
いつかは、形の無いものを掴んでみたい。そんな好奇心――

9/23/2023, 12:35:32 PM

ジャングルジム





ジャングルジムの一番上まで登って、遠くの景色を見るのが好きだった。
普段とは違う目線。子供ながら新鮮な感じがした。
風が吹くと心地がいい。これも結構好きだった。
丸見えだけど、秘密基地っぽい感じ。一番上にいるのが良い。
友達と遊ぶ時は様々な遊びを考えたりして、どの遊びも楽しかった。
大人になってから、ジャングルジムに登らなくなった。それは、大人になったからだろうか?
公園自体に足を運ばなくなった。これも大人になったからだろうか?
大人になったからこそ、ジャングルジムの上まで登って、遠くの景色を見るべきだと思う。
普段とは違う目線が、大人になればもっと違うく見えるかもしれないし、懐かしく思うかもしれない――

9/22/2023, 2:12:16 PM

声が聞こえる




目を瞑ると今でも思い出す。
楽しかったあの頃。放課後、一緒に帰って寄り道をした。
休日は観たかった映画を二人で観て、感動していた。
夏祭りの時は花火を静かに見て、クリスマスの時はプレゼントをお互いに交換した。
どんな時でも一緒。泣いたり、怒ったり、笑ったり。
――ふと、君の声が聞こえる。ゆっくりと目を開けて、振り返る。
しかし、誰もいない。私が一人だけ。思わず、苦笑がこぼれた。
もう君はいないのに、気がつけば思い出に浸り、探している。
どうしてあの時、握っていた手を離してしまったのか。後になって後悔する。
しっかりと握っていれば、今でも隣には君がいたはずなのに。
もう一度、君に会えたらその手を握り、絶対に離さない。
また君の声が聞こえた。幻聴が聞こえるほど、君を好きだったなんて、愛していたなんて――

9/21/2023, 11:32:59 AM

秋恋




男心も女心も秋の空のように、ころころと心が変わりやすいもの。
あの子が好き、気がある、何か違う、今度はあの子。
ころころ、ころころと変わる、変わる。
いつか、本当の恋と言うものを知るまでは、変わりやすいのであろう――

9/20/2023, 12:31:59 PM

大事にしたい





大きくなってきたお腹を優しく撫でる。
中でぽこんっと蹴られた気がした。
その度に、ついつい笑みが溢れてしまう。
また優しく撫でる。本当に愛おしい。
生まれてくる子との時間をいつまでも大事にしたい。
そう願いながら、子守唄を歌った――

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