時間よ止まれ
時間が止まればいいのにと思ったことは幾度もある。
それは過去も現在でも思っている。
後何回、友達と遊べるのか。
後何回、親と一緒に居られるのか。
後何回、自分の子供と共に過ごせるのか。
幸せな時を永遠と過ごしたいと思うのは当たり前のこと。
時間よ止まれ、叶うならば――
夜景
ホテルのある一室から見える夜景を静かに見つめる。
キラキラと様々に輝く灯りはまるで星のようだ。
都会の光はなんとなく忙しなく感じる。それなのに、美しい。
夜じゃないとこの美しさはわからないし、味わうことはできない。
この光が全て消えると深い闇に包まれるだろう。
深い闇があるからこそ、光は美しく輝きを放つことができる。
それは逆も然りだ。光があるからこそ、深い闇は暗さを増す。
この世は光と闇でできていることが、わかる。
夜景はそれを教えてくれているような気がする。
もう十分見たので、カーテンを閉めた。明日も早い、ゆっくり休もう――
花畑
一面、綺麗に咲き乱れる色とりどりの花たち。
青空の下、微風に吹かれて、ゆらゆらと揺れる。
どんな話をしているのか、いつも楽しそうな雰囲気。
見ているだけで、心がすぅーっと軽くなって、優しい気持ちになる。
空気も澄んでいて、呼吸をするたびに肺が喜んでいる。
どの季節でも、美しい花の絨毯。また来年が楽しみだ――
空が泣く
ぽつん、ぽつんと地面に雫が落ちる。落ちた場所は、色が変わる。
また、ぽつん、ぽつんと。そして、一気に降ってきた。
何か悲しいことでもあったのか、それともどこかが痛くて我慢できないのか、あとは嬉しいことでもあったのか。
どれかはわからないけど、空が泣いている。傘に空の涙が当たると音が鳴った。
その音でわかった。嬉し泣きかなと。
「いいことあったのー?」
空に向かって声をかけた。すると、応えるように傘に涙を落としていく。
「よかったねー、空さーん」
傘をクルクルと回しながら、空を見つめる。
今日は嬉し泣きでよかった。でも、悲しい時の空さんも好き。
変だと思われるけど、好きなんだ。
滝のように激しく空から降ってくる涙。音も大きな音で、嘆いているように聞こえる。
傘に穴が空きそう……。と思うけど、良いんだ、別に。
空さんが泣いた後に出る、七色に輝く美しい虹。
空さんが泣いた後の贈り物。これは本当に美しくて、見惚れてしまう。
だから、悲しい時の空さんが好き――
君からのLINE
今日あった出来事を彼女に報告をする。
既読はつかない。
次の日も楽しかったことを報告する。
もちろん既読はつかない。
またその次の日も美味しいものを食べたよと報告する。
一向に既読はつかない。
毎日、毎日、毎日、報告をするけど既読がつく気配はない。
君からのLINEの返事が返ってこない。いくら待てども。
本当は返ってこない理由なんてわかっている。
ただ、現実を受け止めたくないだけ。ギリっと奥歯を噛み締める。
スマホを壁に投げつけた。ガンっと鈍い音が部屋に響く。
わかっている、こんなことをしても彼女が戻ってくるはずがないことを。
外は雨が降り始めた。徐々に雨足が強くなる。
ふらふらと立ち上がるとスマホを拾いにいく。画面が少し割れていた。
心の中で祈り、震える指でLINEアプリを開いた。奇跡が起きればいいのにと思いつつだが、やっぱり既読はつかない。
神様は意地悪だ。どうして、彼女を天へと連れて行ってしまったのか。なんで、彼女だったのか。彼女が何か悪い事でもしたのだろうか。
考えるだけで、怒りと悲しみ両方が湧き起こる。
画面の割れたスマホに自分の額を強く押し当てて、声にならない声で泣いた。
君からのLINEは既読はつかないし、もう来ない、そんなのわかっている。わかっているんだけど、わかりたくないっ――